現場インタビュー
安定、安心、フォローも抜群! 女性管理職が明かす、仕事も家庭も両立できる電気主任技術者の働き方
多くの働く女性が直面する「家庭と仕事をどう両立するのか?」という問題。結婚、出産、育児に追われる中で、なかなか自分のキャリアを築けず断念する人も。そんななか、勤続28年を誇り、現業系職場において初の管理職に就いた方が電気業界にいます。
それが関東電気保安協会・土浦事業所に所属する日野由利子さんです。「この仕事は女性でも続けられるし、制度も環境も整っている」と日野さんは語ります。毎日、家族のためにお弁当を作る、母としての仕事も抜かりなしの日野さんの仕事観とは?
現場で女性ならではの細やかさで高評価をゲット
――電気業界は男性が多いイメージですが、なぜ男性中心の職場を選ばれたのですか?
「もともと工業高校の電気科に通っており、電気は身近な存在でした。そんななか、私が働く関東電気保安協会や東京電力さんが女性の技術者を入れようと取り組んでおり、女性でも働けそうだし面白そうだな、と好奇心が湧き、入社を志望しました」
――入社されてから現在までどのようなキャリアを築かれてきましたか。
――ということは、働きながら、プライベートの時間を使って資格の勉強をしていたのでしょうか。
「いえ、4年の実務経験を積むことで資格を得ることができました。資格を獲得してから、担当検査員として本格的なキャリアをスタートさせることができました。ただ私の場合、途中で育休を2度取得したため、休みつつ4年の日数を積み重ねてく日々。そのため資格取得までには約8年の時間を要しました」
※現在は、実務経験は5年です。(保安協会の場合は外部委託)
――担当検査員になってから苦労されたことは?
「いままで男性が担当していたことを女性が対応していますので、訪問先のお客さまはびっくりされていましたね。『この女性に点検を任せていいのか』と不安を抱いているなと、感じることも多々。しかし、この仕事は経験と技術がものをいうので、実績を重ねていけばお客さまとの信頼関係を構築できる。なので、その点はあまり気になりませんでした。むしろ男性ばかりの現場なので、女性用トイレがないなど環境面で苦労しましたね」
――現場に出るということは体力を求められることもあると思います。そういった時に男性との差を感じたことはありましたか?
「測定器具を使う時に腕力のなさを痛感することはありました。ただそれは周囲がカバーしてくれるので、問題ありませんでした。力では男性に勝てないからこそ、細かな作業や女性ならではの気遣いや心配りを大事にするなど、別の部分で自分の実力を発揮していくことが大切です」
出産・育休で同期から遅れてしまうのが悔しかった。でも…
――日野さんはこの道ひと筋28年。この仕事を辞めたい!と思った瞬間はありますか?
「ありましたね。23歳で結婚し24歳の時に1人目を出産。その時、私はまだ電気保安のアシスタントの立場でまだ独り立ちできていない。妊娠が発覚した後は内勤業務になったので現場に出られず経験も積めない。そして仕方ないとはいえ、小さな子どものお世話をしなくてはならず、育休を取る…。27歳の時に続いて2人目を出産したので、同期からかなり遅れをとってしまったのです。アシスタントを卒業し、担当を任してもらえるようになったのは30歳のころ。この頃は焦りから辞職という言葉が頭をよぎりましたね」
――辞めようと思ったのに辞めなかった。日野さんを留まらせたものはなんでしょうか?
「小さな子供の面倒をみてくれる家族や朝早く、夜遅くでの時間帯の業務を配置しなかった・軽減してくれた会社のサポートがあったからです。子どもの具合が悪くなったら、快く早退を許してくれる職場環境でもありましたし、ママ社員としては本当に働きやすい環境でした」
――仕事と子育ての両立で苦労したことは?
「実は、苦労をした記憶がないんですよ(笑)。土日出社が多い仕事なので、子供が遊びたい時に相手ができないこともありましたが、学校行事があれば休ませてもらったり、毎年の家族旅行へ出かけたりするなどして、子供たちとしっかり時間を過ごすことができました」
――現在は現場系職場としては初の女性管理職(課長代理)に就任されています。具体的にどんなお仕事をされているのでしょうか?
「私の下に2人の係長がおり、各係長の下に5名が所属。計12名の労務管理や点検内容の確認、それに付随して委託業務の契約管理をしています。管理職という立場から、チームをマネジメントすることも私の業務です。男性の管理職の中にはリーダーシップで引っ張っていくタイプが多いかと思いますが、私はチームに尽くしながらひとつにまとめるタイプ。メンバーに気を配り、率先して動くことでリーダーとしての姿を示すようにしています。
管理職を目指したいと思ったきっかけは、尊敬する上司が後押しをしてくれたことでした。その時の上司のような管理職になりたいと思いながら、日々努力をしています」
――同じ職種に就く女性の同僚はいらっしゃいますか?
「いまは茨城県の土浦事業所に勤務していますが、同事業所で働く女性は一名。過去には何名かいましたが、結婚・出産を機にみんな辞めてしまって。辞める前に『仕事と家庭をどう両立しているの?』と相談されたこともありますし、皆さん悩んでいたみたいです。女性技術者(検査助手)は、県外にも3名ほどいます」
――せっかく経験を積んだのに辞めてしまうのはもったいないですね。
「そう思います。この仕事は女性でもやり遂げられると声を大にして言いたい。出産前後は、どうしても休まざるを得ない時期がありますが、ちゃんと復帰できますし、育児と仕事が両立できる環境も整っている。先述したように、技術職ですから、性別は関係ないんです。むしろ女性ならではの細やかな気遣いが求められる職業です」。
――最後の質問です。日野さんにとって電気とは?
「未知数無限大。これは、電気が変化→仕事が変化→経験が未知数=ワクワク感無限大という造語です。
未来のことは分かりませんが、おそらく永遠に無くならない仕事。無くならないので永遠に携わっていられるなと思っています。可能なら定年を迎える65歳まで続けていきたいですね」
<日野由利子さんプロフィール>
関東電気保安協会所属の電気保安。自家用電気工作物の保安業務の補助者(検査助手)を経た後、自家用電気工作物を所有するお客さまからの委託による保安業務を実施する電気主任技術者(検査員)として勤務。
現在は、管理職(課長代理)として茨城事業本部土浦事業所の電気保安3課に所属。 担当業務として各検査員の現場業務の管理業務に取組む。
最近では、太陽電池発電所の使用前自己確認業務も多数実施。
<取材・執筆>