重いバーベルを上げる鋼の肉体が電気を守る-ウエイトリフティング選手と電気主任技術者、二つの顔を持つ19歳が語る「ぼくの好きな仕事

更新日:2020.04.02投稿日:2020.04.02

「自分、この仕事が好きです」
第一声でそう語ってくれた北陸電気保安協会の中本唯人さん。電気主任技術者として働く19歳(2020年3月時点)は、なんとウエイトリフティング選手でもあります。働きながら、選手としても活躍する中本さんは、仕事と競技を両立し、国体で優勝する(国体で入賞)など輝かしい実績を持っています。中本さんが語る好きな仕事について、選手としての日々と合わせて語っていただきました。

難解と言われる第三種電気主任技術者試験に高校3年生で突破!

――WattMagazin編集部です。今日はよろしくお願いします。自己紹介をお願いしてもいいですか?

 

「(目を輝かせながら)今日は、よろしくお願いします! 北陸電気保安協会の石川支店に所属する中本唯人と言います。2019年に新卒で入り、まだ1年目(20203月)の新人です」

 

――現在のお仕事を教えてください。

 

「工場やビル、学校といった大きな建物の電気設備の点検や保守管理をする、電気主任技術者として働いています。電気主任技術者の資格を持っていますが、まだまだ実務経験が足りておらず、一人で点検先には行けないので、今は補助として先輩についていきながら実務経験を積んでいる最中です」

 

――失礼ですが、現在はおいくつですか?

 

19歳です! 高校卒業後、すぐに入協しました。もともと工業高校の電気科に通っていたのですが、ある日、担任の先生から第三種電気主任技術者(通称、※『電験三種』)になるための試験が年に1回あること、合格率が低い難攻不落の試験があることを教えてもらって。この資格を取っていれば就職に有利になるかなって思い、受験しました(笑)」

――第三種電気主任技術者の試験勉強はどれくらいしましたか?

 

「電気のことは授業で学ぶので、それが試験勉強に役立ちましたね。足りない部分は自主勉強。試験月の9月前の夏休みは、14時間くらい猛勉強しました。この試験は4科目あって、すべて合格すれば資格取得となります。一部の科目だけ合格した場合は科目合格となり、翌年または翌々年の試験でその科目の試験が免除されるんです。自分は2年生の時に1科目、3年生の時に3科目を受け高校在学中に資格を取得しました」

 

――高校を卒業し、すぐに北陸電気保安協会で働きはじめた中本さん。高校在学中、大学への進学は考えませんでしたか。

 

「そうですねえ、勉強がちょっと苦手なので、大学へ行ってまで勉強したくないなあって思っていて。だから、中学生の頃から、『高校を卒業したら働こう』と決めていたんです。工業高校の受験で専攻する学科をどれにするか迷っていたとき、電気は将来的にもなくならないから職にも困らないだろう、という安易な気持ちで電気の道を選びました(笑)。結果的に自分には合っていたので良かったと思います。職場のみなさんはいい人ばかりですし、働く環境にも恵まれています。ウエイトリフティング(重量挙げ)のアマチュア選手としても活動しているのですが、みなさん応援してくれるんですよ。試合がある期間は自分の業務にも配慮してくれて、本当に、本当にありがたいなって思っています」

――ウエイトリフティング選手でもあるんですね!すごい!!!!

 

「はい。昔からプロレスラーのような肉体に憧れていて、ウエイトリフティングをすれば彼らのように鋼の肉体を手に入れることができるのかと思い、高校の部活動ではじめました。それからコツコツと努力をして、3年生の時(2018年)にインターハイ(全国高等学校総合体育大会)の53㎏級で優勝。最高で125キロのバーベルを持ち上げることができますよ! ただ、プロレスラーのような分厚い筋肉は手に入りませんでしたが(笑)。」

ウエイトリフティングも仕事も、努力をすれば実は結ぶ

――ウエイトリフティングで得た経験が仕事に生きたと思う瞬間は?

 

「ウエイトリフティングは、努力をすればするほど結果が出ますし、自分の成長が目に見えるのでやりがいがあって楽しい。電気の仕事もそうなんです。まだ分からないことがあるし、難しいことはたくさんある。でも経験を積めば積むほど、少しずつレベルアップしている自分を実感できるから、それがすごくワクワクして楽しい。自分、この仕事、すごく好きなんですよね。嫌だと思ったことは一度もありません」

 

――仕事が好きって堂々と言えるなんて、素敵ですね!

 

「社会人になってからできることも増えたし、学生時代より今が楽しいですね。お給料をもらいはじめてから、使えるお金も行動範囲も増えましたし、それによって自由度も増しました。学生時代は行けなかったところも車で行けますし、買えなかったブランドの服や時計も買えるようになった。それが働くモチベーションにもなっていますね」

 

――初任給で買ったものは?

 

「以前から欲しかったポール・スミスの時計を買いました!」

 

――初任給の買い物は一生の思い出ですね。大事にしてください。ウエイトリフティングの練習はどれくらいしていますか?

 

「仕事終わりや休日に週4のペースで練習しています。高校時代に比べて練習時間が限られているので、時間内でできるかぎりの練習をするようにしています。おかげで練習の質が向上し、どうすれば効果的な練習ができるかを考えながら実践して、毎回、大会に臨んでいます。最近、20歳以下が集まる大会の55キロ級に出て2位だったので、次は必ず優勝したいです!」

 

――がんばってください! 次は最後の質問になります。中本さんにとって電気とは?

 

「う〜〜ん。友達とご飯に行ったお店でもカラオケ店でも、ウエイトリフティングの大会でも、なんにおいても電気は必要。なにをするにも電気は息のように必要なもの。電気はあって当たり前、空気中の酸素のような存在。その電気を自分が管理できるなんて、素晴らしい、誇らしいなって思います」

 

※第三種電気主任技術者は試験を受ける以外に経済産業省が認定した学校を卒業し、保守点検業務の実務を積み、認定を受ける方法がある。

<中本唯人さんプロフィール>

2019年度の新入職員として、北陸電気保安協会に入協。高校在学中に第3種電気主任技術者の資格を取得し、その資格を活かして電気主任技術者(補助)として勤務中。高校在学中に、ウエイトリフティング部に所属し、3年生の頃(2018年)、全国高校総合体育大会(53㎏級)で優勝。社会人になった今でもアマチュア選手として、国内のさまざまな大会に出場している。

 

<取材・執筆>

野田綾子

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