現場インタビュー
飛び込み営業とかするの? 開業資金はいくらかかる? フリーランス電気主任技術者になるためのいろは
最近では特定の企業や組織に就職せず、自分のスキルを活かしながら独立して働く、フリーランスで生計を立てる人も増えてきました。自分で稼働時間を決めたり、仕事のボリュームを調子したりできるとはいえ、「仕事のオファーはどうやって得るの?」「独立するための開業資金はいくらかかるの?」など、不安や疑問はたくさんあるはず。今回は28歳と若くして独立した岩本翔太(仮名)さんに、フリーランスになるまでの経緯とその心得についてインタビューしました。
目次
自分の時間がなかなか取れない。ワークライフバランスのある生活を送りたくてフリーランスに
――現在のお仕事内容について教えてください。
「電気主任技術者として働いています。工場やビルなどの大きな建物は、たくさん電気を使うため、一般家庭とは異なる電気設備を使わないといけません。その電気設備を自家用電気工作物と言い、自家用電気工作物の点検・保守をすることが私の仕事です」
――現在、フリーランスの電気主任技術者として働かれているそうですが、独立のきっかけは?
「電気設備の保守点検をする組織のいち職員として働いていたのですが、職場の先輩が退職した後に独立したと聞き、『フリーランス』という道もあるんだなと、意識し始めたことがきっかけです。その頃、職場と家が遠く、通勤に1時間半から2時間もかかっていて。毎朝起きるのはなんと朝の5時。そのせいでなかなか自分の時間が持てず、このままでいいのかなって悩んでいました。もっとワークライフバランスが取れた生活をしたいと思っていたところ、先述したフリーランスという選択肢があることを思い出し、退職して独立しようと決めました。その時、28歳でしたね」
――28歳で独立なんて早いですね!
「若さゆえの勢いもあったと思います(笑)。今はスケジュールを自分で調整できるので、自分の時間を持つことができましたし、独立して良かったと思っています」
営業は必要?? 開業資金はいくら? 不安は先輩に相談する
――開業準備にはどんなことを?
「独立の準備として、まずは東京電気管理技術者協会に入る手続きをしました。この協会はフリーランスの電気主任技術者が所属する団体で、ここに入ると、協会から仕事の斡旋をしていただけたり、業界仲間とのつながりを作ったりできるのでフリーランスなら入協した方がいいと知り、希望届を出しました。前職を退職してから開業届を出すまでには4カ月ほどあったので、空いた時間に同業者の手伝いに行き、開業資金を作ることもしばしばありましたね」
――東京電気管理技術者協会に入るために、どのような準備が必要でしたか。
「3泊4日の研修があるのですが、そこで座学と技術指導を受けました。この研修費用を自分で出した時、今までの研修費用は会社が出してくれていたので改めて会社の有難みを実感しましたね。同時にこれからは自分一人でやっていくんだ!という武者震いも起きました」
――フリーランスって基本的に1人でやらないといけませんよね。 不安になりませんでしたか?
「開業資金はどれくらいかかるんだろうとか、仕事はもらえるかなとか、不安は確かにありました。不安が出てきたときはすでに独立した先輩に相談へ行きました。開業資金に関しては、移動用の車と測定器の購入、東京電気管理技術者協会の入会費がかかりましたが、会社員時代の貯蓄でまかなえるくらいの金額。具体的な数字は言えませんが、銀行にお金を借りるほどではないですよ」
――お仕事をもらうため、飛び込み営業や電話営業など、ご自分で営業をするんですか?
「いえいえ! 東京電気管理技術者協会で仕事を紹介してもらったり、協会に所属する先輩から紹介してもらったりできるので、特別な営業はとくにしていません。有難いことに、定期的にお仕事をいただけていますが、案件数としてはまだまだ。もっと仕事をして、売上を上げていきたいですね」
自分の仕事の全責任を負うのがフリーランス。だからこそ成果は全て自分のものになる
――会社員とフリーランスの違いって何だと思いますか?
「責任の負い方が一番の違いですね。フリーランスは自分が責任者ですから、請け負った仕事の責任は全て自分で負います。自分で決断し、現場以外の事務作業も自分で。前は保険の手続きを会社がしてくれましたが、今は自分で対応して(東京電気管理技術者協会に各種保険が用意されています)、税金も自分で払う。前は領収書なんてもらっていませんでしたが、今はもらうようになりましたね。そういう時、自分はフリーランスなんだなって実感します。あとは仕事した分のお金がまるまる貰えるので、自分の成果が数字に反映されているようで、やりがいは違いますね」
――頑張ってください! 技術面に関して気になるのですが、組織に属していると、熟練の技術者が技術指導をしてくれます。ただ、フリーランスだと自分からスキルアップの機会を作らなければ、技術の向上が難しい部分も。その点に関してどういった対策をしていますか?
「有難いことに、東京電気管理技術者協会にはたくさんの先輩がいらっしゃいますから、技術面で分からないことがあれば、先輩に相談して教えてもらうことができるんです。頼れる先輩がいるのは、本当に有難いこと。また、各種講習会もたくさんあり、技術以外の法律改正等もそこで学ぶことができるので困ることがありません。ただ一方で、スケジュール管理やお金の管理は自分でしないといけないため、そこは誰かに頼ることができない。そこは自分で管理して、責任をもって仕事を回すようにしています」
――責任感が強いですね。では最後の質問になります。岩本さんにとって電気とは?
「震災の時、多くのご家庭で停電が起こりました。その時、電気がないとエアコンも使えないし、明かりがないので夜になると暗くて動くことさえできない。それに冬に電気が使えなかったら、暖を取れず、凍死してしまうかもしれません。そう、電気は命をつなぐものなんです。そういう面で、普段はなかなか気づかないけど大切なものだと思っています」
<執筆>
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