現場インタビュー
「過去の自分」が「今の自分」を支えている。“中途社員の星”が語る電気保安の仕事
電気保安の職場では「新卒入社→定年退職」が定番のキャリアコースでしたが、最近は中途採用にも力を入れています。とはいえ中途入社をすると、経験の差が出てしまい活躍できないのでは…と感じる方もいるかもしれません。しかしそんな不安は心配ご無用。九州電気保安協会の米田健志さんは、電気保安の経験ゼロで中途入社し、活躍しています。米田さんは「過去の経験が今に活きている」と語り、経験の差はあっても中途だからこそできることがあると明かします。また、教育制度が充実していて、先輩や同僚のフォローがありましたので安心だったとのこと。今回は米田さんから、中途社員が輝く方法を伺いました。
電気保安の仕事をしたいのに求人が見つからない! しかしチャンスは突然やってくる
――九州電気保安協会には中途採用で入社されたとのことですが、それ以前はどんな仕事をしていましたか?
「私にとって九州電気保安協会は3社目です。1社目は電気設備工事をする会社でした。もともと漠然と社会貢献したいという思いがあり、社会インフラに携わる仕事をしたくて、1社目の会社を志望したんです。その後、半導体を製造する会社に転職。昔から手に職をつけたいと思っていましたが、1社目の会社では現場管理に追われるばかりで、技術がなかなか身につかなくて。
この先もしっかりと技術を習得するのは難しいと思い、転職しました。2社目は大学時代の研究ノウハウが役立てられ、仕事も充実し、やりがいもありました。ただ、半導体の世界は浮き沈みが激しいため、そのうち将来に不安が出てきてしまった…。そのような時、九州電気保安協会が中途採用者を募集していると知り、手に職をつけることが叶うと思い、応募しました」
――九州電気保安協会は電気の点検・保安を行っている企業です。なぜ入社したいと?
過去の努力が今の仕事に結びつく
――悲願の職場だったんですね! 入社した後はどんなキャリアを歩まれたんでしょうか?
「第三種電気主任技術者の資格は持っていたものの、外部委託制度における実務年数が不足していたため、初めは試験技術業務を行う技術グループ(当時は技術センター)という部署へ配属されました。大型の商業施設などには専任の電気主任技術者が常駐されているのですが、電気設備の停電点検は1人で実施することができません。そんな時、私たちがお手伝いという形で一緒に点検をするんです」
「その後、本部への配属が決まり、3年ほど在籍。そしてまた、福岡支部技術部技術グループへ移り、試験技術業務と社外講習会の講師を務めました。その後、福岡支部福岡西事業所へ配属され、保安管理業務に従事し、工場や学校、商業施設など自家用電気工作物のお客さまを担当致しました。それから、1年1ヵ月を経て、また本部への配属となりました。
現在は本部で作業のマニュアル作成や新しく導入する試験器等の検討など、現場の技術者たちのサポート業務をしたり、社内研修の講師も務めたり。また、九州は大雨による災害も多く、時には復旧作業へ出向くこともあります。先日も令和2年7月豪雨のため、熊本県人吉市において泊りがけで復旧作業をしました。電気を供給するのは電力会社の仕事ですが、その電気を安全に使用可能かどうか電気設備の診断を行うのは私たちの仕事です。被災されたお客さまは電気を早く使いたい。その要請に応えられるのは私たちしかできない。その願いに応えられた時、やりがいを感じます」
――たくさんの経験をお持ちですね。
「そうですね。各部署で経験したことが、今に繋がっているので、どの経験も重要な意味を持っています。電気設備の点検業務を経験していた時、『ここを改善したい』、『こういうマニュアルがあれば助かる』と感じたことが現在の本部におけるサポート業務に活きていますし、転職前の経験もそう。2社目の会社で行っていたマニュアル作成の知識や経験が現在のマニュアル作りに役立っています。」
――その他に前職の経験が活きているな~と感じることは?
「経験ではありませんが、1社目と2社目の在籍時に資格を取得たことが、現在に活きています。先ほど言いましたとおり、1社目で働いていた頃、第三種電気主任技術者の資格を取りました。実は自分が所望していたわけではなく、会社に取るよう言われ、勉強し、取得したのですが、この資格があったおかげで九州電気保安協会に入社できました。
1社目では第三種電気主任技術者の資格を取得後、第一種電気工事士と消防設備士(甲種第4類)を取得し、2社目の時にエネルギー管理士の資格を取りました。どれも資格取得の理由は、同期から誘われたり、会社に勧められたり、で積極的に取ったわけではないのですが、手に職をつけることにつながると思い、勉強したことを覚えています。その過去の自分の頑張りが、今の自分を助けてくれていますね。その経験から現在も1年に1資格を目標に資格取得に励んでいます」
中途社員だからこそ活かせることが電気保安の仕事にはある
――中途入社した社員への教育内容を教えてください。
「社内研修が階層別に用意され、充実しています。後は、先輩に同伴してOJTのような形で業務を覚えることがほとんどです。この仕事は危険を伴う業務も多く、現場で何が危険かを肌で感じる必要がある。現場でしか学べないことが多いんです」
――中途入社だからこそ活かせることは?
「違う世界で働いてきたからこそ、広い視野が持てるのかもしれません。私たちの仕事は電気工事の施工後に、電気設備が安全に正しく使用できるかを検査し、確認することですが、同僚の中には、電気工事をしていた人もいます。そういう人は電気工事士の立場が分かるので、電気工事士目線で点検や改修の提案ができます。そのおかげで、現場の流れがスムーズになるんですよ」
――電気保安の仕事に転職を考えている人がいたら、どんなアドバイスをしますか?
「電気保安の仕事は地味ですが、電気の安全を守り、お客さまの日常を支える縁の下の力持ち。そういう仕事ってなかなか無いんじゃないでしょうか。電気事故や災害が発生した時の対応は本当に大変ですが、社会貢献ができますので、大きなやりがいを感じます。それに先程説明したように階層別研修をはじめ、教育制度も充実していますので、安心して入社して欲しいと思っています」
――素敵なアドバイスをありがとうございます。最後の質問です。米田さんにとって電気とはどんな存在でしょうか?
「難しい質問ですね。現代の生活になくてはならないもの、でしょうか。スマホや電化製品を動かすには、電気は欠かせません。しかし同時に扱い方を間違えると感電したり、火災の原因になったりと危険な存在になります。実は、電気を扱うことを仕事としている私にとって、電気は怖いものなんです。電気の本質を理解しているからこそ、間違いがないように取り扱わなくてはならないと思っています」
<米田健志さんプロフィール>
大学を卒業後、2社を経て、2007年一般財団法人九州電気保安協会に入社。福岡支部の技術部門に配属され、試験技術業務に従事。その後、実務年数経過後、自家用電気工作物の保安管理業務に従事。現在は、本部において保安業務に関する管理部署である事業部に所属し、自らの経験を活かし、現状の把握と課題を的確に抽出する業務を行う中で、主に社内規程類の見直しやマニュアル等の作成に従事している。
<取材・執筆>
野田綾子