生活と電気
冬が来る前に知っておくべし!静電気が起きるしくみと静電気対策
寒い時期、ドアノブに手をかけると「パチッ」という音ともに小さな痛みが走った経験はありませんか。静電気が起きる仕組みと対策方法を知っておくことで、静電気を事前に避けることができます。この記事では静電気が起きるシーン別に有効な静電気対策を解説します。
静電気とは
人間もどんな物質も、すべてプラスとマイナスの電気を持っています。通常はプラスとマイナスの電気が釣り合った状態で過ごしていますが、物質への接触により摩擦などが起きると、原子の中の電子が移動し、バランスを崩してしまうことがあります。これが「静電気が発生した」状態です。

プラスとマイナスのエネルギーが近づくと電気が流れます。これは乾電池と同じしくみです。静電気はどの季節でも発生しますが、冬以外のシーズンで発生しないのは、湿度が高かったり、身体に汗が発生したりすることで導電性が高まり、自然に地面に向かって電気(電子)を流しているためです。
冬になると増える「バチッ」あるある3選と効果的な静電気対策
髪の毛の静電気
冬になると髪が顔まわりにまとわりついたり、毛先が広がったりしやすくなりますが、髪の毛の静電気は、髪と空気の乾燥、摩擦が主な原因で発生します。髪の毛に十分な水分が含まれていれば、水分が静電気を逃してくれますが、湿度40%以下の乾燥した環境にいると、髪や肌が乾燥しやすくなり、静電気が逃げにくくなります。そのため、静電気が発生しやすくなってしまうのです。それに加え、ナイロン、レーヨン、ウールなどの衣類との摩擦によって、髪は静電気が帯びやすくなります。
髪の毛の静電気対策⭐️
1️⃣髪の保湿をする
冬は暖房を使用する機会が増えますが、室内の温度が高くなると、相対湿度は下がり、乾燥が生じます。室内では、静電気を防止する保湿スプレーなどでこまめに保湿をすることで静電気を防止することができます。
2️⃣室内の湿度を上げる・保つ
簡単にできる方法は、タオルを濡らして干しておくことです。加湿器を設置する場合は、窓の近くにおかず、なるべく部屋の中央やエアコンの吹き出し口近くへおきましょう。
3️⃣衣類やくしの素材を変える

2種類の物質を接触または摩擦させたときに、どちらがプラスで、どちらがマイナスに帯電しやすいかを順に並べたものを、帯電列と言います。
上図を見ると、ポリエステルやアクリル、アセテートなどはマイナスに帯電しやすい化学繊維で、ウールやナイロンはプラスに帯電しやすい素材です。静電気を避けたい場合は、なるべく綿やシルクを選ぶといいでしょう。また、プラスチック素材のブラシでたくさん髪をといてしまうと静電気が発生しやすくなりますので、豚毛などの天然毛や木製のブラシに変えてみるのも一つの手です。
ドアノブの静電気

ドアノブは金属でできているものがほとんどです。金属は導電性が高く、電気をよく通します。ドアノブを触ると「パチッ」としてしまうのは、人の体にたまっていた静電気がこの金属に触れることで一気に放電されてしまうためです。人は日頃から衣類を着用して生活をしており、カーペットや髪の毛など、普通に生活していると摩擦を避けることは困難です。知らず知らずのうちにどんどん電気をためていきます。ドアノブの「パチッ」を防止するために次の対策を試してみてください。
ドアノブの静電気対策⭐️
1️⃣触れる前に放電する
ドアノブより先に両手のひらをコンクリートや木、紙に触れておく方法です。これらは金属ほど電気が流れやすい物質ではないため、放電せずゆっくり電気を身体から逃がします。また、金属に触れる前にタッチをして静電気を軽減する静電気除去シートも市販されていますので、活用するのもおすすめです。
2️⃣手のひらで触れる
指先は細くとんがっており、電荷がたまりやすく集めやすい、そして電気が流れやすい構造になっています。この構造を応用したもので世の中では「避雷針」です。避雷針は細く長い先端に雷の電気エネルギーを集めることで、雷から建物や人を守っています。ですから、静電気を起こさないためには、なるべく手の平で触るようにしましょう。
衣類の静電気
髪の毛の静電気でも述べましたが、プラスに帯電しやすい素材とマイナスに帯電しやすい素材が擦れることで静電気が起こりやすくなります。プラスに帯電しやすい素材同士であれば、静電気が発生しにくくなり、帯電しにくい絹(シルク)や綿、麻は擦れても静電気が発生しにくいです。
衣類の静電気対策⭐️
1️⃣衣類の組み合わせを工夫する
たとえば、ポリエステル素材のシャツとウール素材のセーターを重ね着すると帯電しやすくなります。ウールのセーターの下には綿素材のインナーを着用するなど、静電気が発生しにくいコーディネートを楽しみましょう。
2️⃣静電気防止スプレーを吹きかける
衣類に吹きかけるだけで、衣類の静電気やまとわりつくのを防止するスプレーもあります。コーディネートを気にしなくていいのがメリットです。
静電気は身近なところで活躍していた!
静電気と聞くと、通常良い印象を持つ人はいません。しかし、この静電気を活用して私たちの生活をサポートしているものがあります。それがスマートフォンのタッチパネルです。
スマートフォンのタッチパネルは、ひと昔前に使われていた携帯電話のボタンみたいにぽちぽちと手で文字を入力しなくても画面上でサクサクと反応します。その仕組みは、指の電気に反応しているからです。そう聞くと、静電気に対するネガティブな印象が少し変わってくるのではないでしょうか。

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プロフィール

どわーふ
私立大学大学院(博士前期課程)卒業後、大手メーカーで電気部品の開発業務に従事。現在はとある施設にて電気主任技術者として高圧電気保安業務を担当している。また、フリーライターとして「電気主任技術者が運営する就活転職応援サイト」を運営中。」Twitterのアカウントはこちら。




