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今話題の燃料電池、「エネファーム」の仕組みとは
水素と酸素から水ができる過程で発電をする燃料電池は、脱炭素社会の実現に向けたカーボンフリーエネルギー源として期待されています。都市ガスから水素を抽出して、燃料電池に供給することで電気と熱を取り出す「エネファーム」は、どのような仕組みになっているのでしょうか。
エネファームは都市ガスから電気と熱を抽出するコージェネレーションシステム
エネファームは「家庭用燃料電池コージェネレーションシステム」の愛称で、2008年に燃料電池実用化推進協議会が販売企業に関係なく統一名称としました。コージェネレーションシステムとは、電気を作る過程で発生する熱を有効活用するシステムのことです。エネファームは都市ガスから必ず電気と熱を取り出すシステムで、次の図のような仕組みになっています。
エネファームに必要なエネルギー源は都市ガスです。都市ガスから燃料改質装置を介して水素を抽出し、水素を燃料電池へ供給します。そうすることで水素が空気中の酸素と反応し、水となる過程で電気と熱が発生するのです。 電気はパワーコンディショナーを介して家庭内に供給される一方、熱は熱回収装置により給水系統を温水とします。 温水は都市ガスにより温度調節を行うバックアップ熱源機より、床暖房などの温水を使った暖房と給湯に供給されます。今までは、ただ燃焼するだけのエネルギー源だった都市ガスから、電気と熱を取り出すことで、より効率的なエネルギー利用を行うことができるのがエネファームなのです。
現在のエネファームはCO2を排出する
燃料電池は、水素と酸素から水を生成する過程で電気が発生するため、CO2を排出しないと聞いたことがある人も多いかもしれません。しかし、エネファームは、燃料電池に供給する水素の供給源に都市ガスを使用しています。都市ガスの主成分はメタン(CH4)であるため、都市ガスから水素を抽出する際にCO2を排出するのです。純水素は、爆発性の危険なガスのため、そのままでの供給が難しく、安全に水素を運ぶ方法が検討されています。 現在普及しているエネファームは、水素を安全に供給する方法に都市ガスを活用しています。しかし、それでは完全なカーボンフリーではありません。燃料電池をカーボンフリーエネルギー源として活用するための今後の課題は、水素を安全に運ぶことができる水素キャリアの研究です。 有機ハイドライトやアンモニアなど、カーボンフリーを目的とした水素キャリアの研究は日々進んでいます。
プロフィール
西海登
本業の技術職の傍ら、webライターとして活動。小説家になりたかった過去を引きずりながらも、本業でも関わりのある技術分野の解説と経済分野を結び付ける記事を得意とする。
本業では、ビルメンテナンス業界から産業用機器の電気設計職へ移り、設備関連の保守点検から構築に関する職業を一通り経験、近年ではIoT関連の仕事にも携わり、ライターとしてもIoT分野の記事執筆の実績も増えている。2015年頃から、小説家になりたかった過去を生かせるのでは?と考え、ライティング業務をスタート。朝4時に起きて執筆活動をする日々を送っています。