電気の資格のアレコレ
電気予報士・伊藤菜々さんが解説!「電験三種が今後も必要とされる理由と活かされる場所」
電気の資格の中でも難関の電験。電験三種は電験資格の中でもエントリーとして、若い人からお仕事経験が長い人まで、ステップアップとして取得します。第三種電気主任技術者の人口は今後、減少していくと言われており、ますます必要度合いが増しています。実際に電験三種の取得にチャレンジしている伊藤菜々さんに、その理由と活躍の場を聞いてみましょう!
目次
難関資格!電験三種取得を決めて挑戦!試験の結果は…?
電験とは電力系資格の中でも難関資格と言われています。電験三種にはじまり、二種、一種と難易度は上がります。令和3年度の電験三種試験では、受験者数は53,685人であり、合格者数は4,357人。合格率にすると8.1%と低く、難関資格であることがわかります。電験一種においては、受験者数は1,541人であり、合格者数はたったの72人。合格率にすると、4.6%とさらに難易度が上がります。
私はそんな難関資格の電験三種の令和4年度試験に挑戦しました。私はもともと文系の出身であり、電験に必要な√やsin、cos、tanといった三角関数さえもうろ覚えの状況。電気予報士としては、電気代や電気に関する企業さんの取り組みに触れる機会は多くありますが、電験三種の試験に出てくる電気回路や磁界の計算、発電機や電動機の計算などは全く分かりませんでした。 令和4年度の試験に向けて約1年前から勉強を開始しましたが、仕事との両立で勉強できない日や、大変だと思うことも多々。2022年8月に受けた試験では、4科目中、理論と電力の2科目を合格。機械と法規の2科目は落としてしまいましたが、次回の試験で再チャレンジをします!
電験三種を取得すると第三種電気主任技術者になれる
なぜそんな難関資格に挑戦しているの? 電気主任技術者になると、そんなにメリットがあるの?と気になる方もいるのではないでしょうか。答えは「イエス」です。 合格率も低く、難関資格であるため勉強も大変ですが、電気主任技術者になりたいという強い想いで乗り切ることができました。自分自身で電力のことを学びながら電気主任技術者になりたい!と想ったことが一番のきっかけでしたが、わたしの場合、父が電気主任技術者として活躍している姿を見ていたことも大きいです。 父は独立して今も仕事をしていますが、仕事をしている姿は本当にカッコ良く、働きかたとしてもプライベートを確保できながら収入も確保できるので、理想だと感じていました。 電験三種を取得すると第三種電気主任技術者になれます。電気主任技術者とは、電気事業法でという法律で定められた国家資格です。第一種電気主任技術者であれば、発電所や変電所などの大型設備も含めたすべての電気設備を保安・監督ができ、大手電力会社が所有している大型の原子力や火力発電所や、広大な面積を持ち複数都道府県に電気を送るための変電所など、人々の生活に欠かせない施設で働くことができます。
第二種電気主任技術者でも、電圧17万ボルト未満の電気設備の保安・監督ができます。第三種主任技術者は、電圧5万ボルト未満(出力5000kW以上の発電所を除く)の保安・監督ができます。決められた電圧未満の発電所や変電所で働いたり、電気を使う側であるビルや工場、大型商業施設などの電気設備の保安・点検をしたり、電気設備の修理や導入のときの立ち合いを行い、安全を守ります。 これは、電験試験を合格した人にしかできない仕事であり、いわゆる法で定められた独占業務です。 世の中の仕事は時代によって変わります。近年は、昔はなかったyoutuberなどのインフルエンサーやITのお仕事が増えましたが、それに伴い、ネットやIT、PCやタブレットの普で、注文取り、受付、電力の検針員などのなくなってしまう職業もあります。電気は生活のインフラであるため、欠かすことができませんし、今後も需要は増えていきます。生活の中に電気がある限り、電気設備の保守・監督は必要不可欠ですし、法律で法定点検を電気主任技術者が行う必要があります。つまり、世の中の情勢に左右されず、将来も安定して働けるということです。国のインフラを守るというだけでもやりがいを感じますが、長く安定して働けるというのも大きな魅力だと言えるでしょう。
今後電気主任技術者が必要とされるのは「脱炭素」がポイント
脱炭素という言葉を聞く機会が増えましたが、脱炭素は世界的な流れであり、日本も例外ではありません。脱炭素とは、地球温暖化の原因となっている二酸化炭素などの温室効果ガスを減らす取り組みです。日本では2050年には排出される二酸化炭素の量と、森林などで吸収される二酸化炭素をプラスマイナスゼロにすると宣言しています。 二酸化炭素を減らすには、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料の使用を減らす必要があります。家庭においては、ガスなどの燃料自体の料を減らし、その分、電気の使用量が増えるということ、つまり、ガスの使用量を減らし電気に変えていく「電化」が今後、進んでいきます。また、電気も二酸化炭素を排出しない太陽光などの再生可能エネルギー発電に変えることが必要となりますので、再生可能エネルギー発電所をつくるための補助金なども拡大されています。国のエネルギー計画では、再エネを2030年には今の倍くらいに増やす指針が示されています。
そして、これは電気主任技術者と深く関係しています。再エネ発電所が増えるということは、電気の保安点検を行う電気主任技術者の人数もそれだけ必要になるということだからです。 経済産業省でも、電気主任技術者が不足するという見解があり、深刻視されています。現実問題として、今、電気主任技術者として活躍している人の約6割が50歳以上であり、2030年には第三種電気主任技術者の人数が約2,000人不足すると見込まれています。需要と供給のバランスが崩れていくということです。
ならば、電気主任技術者が業務多忙になるのではないかと懸念される方もいるかと思いますが、心配することはありません。なぜなら、電気主任技術者の仕事は安全を守る仕事のため、激務になりすぎてほころびが出ないように受けられる案件数が決まっていること、そして今後、AIやドローンを活用したスマート保安が取り入れられるためです。法律で守られた職業であり、さらに最先端の技術を駆使できるなんて、カッコイイですよね。
結論:電験三種は将来性がある資格!
わたしが電験三種に目を付けた理由は、このような背景があるからです。試験は難易度が高く非常に大変ではありますが、合格して第三種電気主任技術者になれば、たくさんのメリットがあります。 さて、ここで朗報です。これまで、電験三種は年1回のみ受けられる試験でしたが、令和4年度から年2回になりました。科目合格制度で持ち越しもできるので、学業やお仕事と両立しながら取得することもできます。ぜひ、みなさんもチャレンジしてみてくださいね☆
プロフィール
伊藤菜々(いとう・なな)
電力系ユーチューバー(電気予報士) 上智大学経済学部経営学科卒業。電力全面自由化に伴い新電力の立上げに関わった後2019 年から独立し、現在の有限会社スタジオガルを開業。電力事業の立ち上げ・運営支援、企業PRや商品広報、ZEH住宅やマイクログリッド等の地域脱炭素活動を行う。実績として大手新電力 での研修や営業企画、国立大学での講義、展示会やセミナー 等での講師を行う。 電気業界をたのしく!わかりやすく!解説した Youtube チャンネル「電気予報士なな子のおでんき予報」を 2020 年 4 月開設し情報発信中。 第二種電気工事士試験を独学で合格。現在電験三種の一発合格に向けて勉強中。