電気機器のしくみ
電気予報士・伊藤菜々さんが解説!エアコンに使われている「ヒートポンプ」のしくみ
入力するエネルギー以上に熱を作ってくれる、省エネ効果抜群のヒートポンプ。エアコンやお湯を作るエコキュートなどにも使われています。どうして効率がいいのか、省エネ効果や、今後どういう場所で活用されるのか、現在研究されている内容も合わせて解説します。
ヒートポンプの仕組み
ヒートポンプとは、「冷媒」という屋外と屋内の間を取り持つ物質を使うことで、空気の熱を温めたり冷やしたりする仕組みのことです。冷媒とは、圧縮や膨張によって温度が大きく変化します。お湯と冷水を混ぜるとぬるま湯ができるように、温度に差があると高い方から低い方に熱が移ります。 ヒートポンプ式のエアコンの場合、電気で圧縮ポンプを稼働し、冷媒を膨張させてから外気のより温度を低くすることで、空気から熱をもらうことができます。そして、その冷媒を圧縮すると熱を持つことができ、空気の温度よりも高くすることができます。そうすることで室内の空気と熱交換をして、室内を温めることができるのです。ヒートポンプは投入するエネルギーよりも多くのエネルギーを取り出せることが特徴です。エネルギー消費効率はCOPという値で表しますが、COPが高いほど効率が高くなります。
ヒートポンプが使われている場所
ヒートポンプは、エアコンやエコキュートなど熱をつかさどる電気機器に使われています。空調はエネルギーの使用量も大きく、家庭やオフィスなどで他の機器も含めて使用する全体のエネルギー使用量の中でも多くを占めます。ファンヒーターやガスストーブは石油を使うため、火災や温室効果ガスの排出などデメリットがありますが、ヒートポンプ式のエアコンに変えれば安全かつ省エネです。 エコキュートは空気の熱でお湯を作る機器のこと。ガス給湯器はガスを燃焼させることで配管を熱し、そこに水を通してお湯を作ります。しかし、エコキュートはヒートポンプで熱を作り、冷媒には二酸化炭素を使用します。冷媒を膨張させて空気から熱をもらい、冷媒を圧縮することで高温にさせ、水と熱交換することで熱いお湯を作ることができるのです。その他にも、冷蔵庫、洗濯乾燥機、EVのエアコンなどにも使われています。
ヒートポンプの省エネ効果
10年前のエアコンと比べるとエネルギー効率は約2倍。同じように使っていても、電力使用量が半分ほどになるそうです。エコキュートはガスを使わないのでガス代がかかりませんが、その分、電力使用量が増えます。しかし、最近は昼間の太陽光が余っていることも多く、昼間の電気代単価が割安だったり、昼間に電力を使うとポイントでキャッシュバックされたりするプランもあってお得です。エコキュートで作ったお湯は1日以上温かい状態で保存できますので、昼間にお湯を沸かせば安価で済ませることも可能です。
ヒートポンプは今後、どのように活躍する?
ヒートポンプは、冷媒から屋内の空気に熱をもらうときに、小腸のようにひだがたくさんついた熱を受け取る「熱交換器」があります。寒冷地では熱交換機に霜がつかないような研究が、他にも高温のお湯を作る研究、大きな施設で使えるエコキュートを作る研究が進められています。ヒートポンプはエネルギー効率が良いことが最大の特徴です。エネルギー自給率が低い日本にとって、省エネにぴったりなヒートポンプの技術は今後も必要不可欠になっていくでしょう。
プロフィール
伊藤菜々(いとう・なな)
上智大学経済学部経営学科卒業。電力全面自由化に伴い新電力の立上げに関わった後2019 年から独立し、現在の有限会社スタジオガルを開業。
電力事業の立ち上げ・運営支援、企業PRや商品広報、ZEH住宅やマイクログリッド等の地域脱炭素活動を行う。実績として、電力会社や企業での講演、学校での講義、展示会やイベントの出演を行う。 電気業界をたのしく!わかりやすく!解説した Youtube チャンネル「電気予報士なな子のおでんき予報」を 2020 年 4 月開設し情報発信中。 現在、電気主任技術者の実務経験を積みながら電験二種の合格に向けて勉強中。