動画で解説!電気主任技術者の停電点検って?〜リアル年次点検の立ち会い解説でゼロから学ぼう〜

更新日:2024.10.30投稿日:2024.10.31

年次点検

電気主任技術者の業務で欠かせない年次点検。この記事では、カフェジカのメンバー数名が年次点検へ立ち会い、動画で年次点検の手順をわかりやすく解説した動画をピックアップし、ポイントについてご紹介します。

年次点検とは?

日々の生活において、電気設備を安全・安心して使うためには、点検や保守が欠かせません。年次点検は、1年に一回、建物内の電気を全て停めて行う点検のことです。月に一回実施する月次点検で測定しきれない部分の測定、不具合がある箇所の取り換え、キュービクル内の掃除などを行います。

大阪で、高圧受変電設備を実際に見て、直接触れることができる珍しいカフェを運営しているカフェジカさんが、この度、実際の年次点検に立ち会い、重要なポイントを要所要所で解説している動画を公開しました。なかなかじっくりと見ることができない重要な機会、見どころをまとめて紹介します!

リアル年次点検を立ち会って解説してみた①

① 作業前ミーティング
どのような作業を行うのか、誰がその作業を担当するのかを帳票にまとめ、みんながすぐに把握できるようにします。停電作業手順書、復電作業手順書を見て、最も注意が必要な停電作業と復電作業を実施。

② KYミーティング
KYとは危険予知の略語。年次点検の作業に付随した危険箇所を洗い出し、事故防止策について考える重要なミーティングです。実際の現場で、どのような危険があるか、注意事項とともに共有します。みんなで一緒に「足元、ヨシ!」

③ キュービクル検電作業
ハンドルを触る前に検電を行います。重要なことは「検電をする癖をつける」こと!

④ 絶縁監視装置のテスト
検電が完了したら扉を開き、絶縁監視装置をテストします。漏電信号が出るかどうか、通信状態が健全かどうか、テストボタンを押して確認です。

⑤ 発電機の措置
操作手順を確認し、自動モードから試験モードに変更します。

リアル年次点検を立会解説②停電操作・発電機の説明

① 停電操作(エレベーター停止措置)

ここから、キュービクルの停電操作に入っていきます。低圧ブレーカーをいきなり切ってしまうと、エレベータや工場の機械が使用されていた場合、怪我や閉じ込めの危険があります。そのため、エレベータを人が乗らないように停めておき、キュービクル側は止めている間にエレベータが動かないようにしておきます。

②停電操作(VCSの措置)

VCSとは高圧真空コンタクタのことで、自動的に力率を調整する機械のこと。コンデンサがつながったまま停電措置を続けていくと、放電するときにVCSが制御電源が切れてしまったらそのままになってしまうため、VCSを個別で放電する必要があります。一括放電をするためにあらかじめVCSを投入し、放電できる状況にしておきます。

③ 停電操作(遮断機の開放)

低圧開閉器を開放し、高圧側の開閉器も開放します。動力〜電灯で開放し、

④ 停電操作(VCBの開放)

キュービクルの主遮断装置であり、主開閉装置でもある真空遮断機(VCB)を開放します。ブレーカと電源側とVCBの負荷側の間が切れた状態に。

⑤ 停電操作(UGSの開放)

UGSをGRテストボタンで開放します。電圧計を見て確認を行い、「操作禁止札」を取り付けます。安全な姿勢で検電作業を行い、無電圧を確認します。

⑥ 停電操作(短絡接地取り付け)

DSを開放した後に放電を行いますが、団体や組織によって手順が異なるため、動画では2パターンをご紹介しています。

リアル年次点検を立会解説③絶縁抵抗測定・清掃・短絡接地器具の取り外し・復電操作

① 高圧絶縁測定

停電作業が完了したら、次は絶縁抵抗計で高圧用の絶縁抵抗測定を行います。

② 低圧絶縁測定

測定電圧が決まっているので、その電圧を確認のうえ、測定します。

③ 機器の点検と掃除

リレー試験、接地抵抗測定、絶縁抵抗測定が完了したら、機器の点検を行います。キュービクルの中の機器で、加熱や変色、破損がないかをチェックします。その後、電気設備の保安清掃を行います。ここでは、碍子にトラッキングがないかなど、埃をとりながら確認を行い、最後に機材を撤収します。

⑤ 短絡接地器具の取り外し

短絡器具を数えながら取り外し、「短絡接地中」の札を取り外します。復電の前に、作業責任者または電気主任技術者は設備に問題がないか確認し、最終の検収を実施します。

復電操作

まずはVCBの開放を確認し、DSを投入します。確認ができたら、UGSの仮投入を行い、SOG制御装置のSO試験で開放テストを行います。検電により、DS一次側無電圧確認ができたら、UGSをリセットし、UGSの本投入し、電圧を確認。UGS動作表示のリセットとアクリル版を戻り、施錠します。

続いて、VCBを投入し、低圧側の電圧を確認します。この際、変圧器の二次側に電圧計があるので、ここで全て確認します。この時、電圧に異常があった場合、再度UGSを切って確認しなければなりません。

発電機の商用電源のブレーカーを投入。これは、非常用発電設備に商用電源の信号を送るもの。この後、発電機を自動運転に戻し、キュービクル側の発電機回路のブレーカーを切って、自動運転が行われるかを確認、ブレーカーを投入して自動停止するかを確認します。電灯から動力の順でブレーカーを投入します。スイッチの入れ忘れがないように、複数名で確認をして抜け漏れを防止します。

⑦ 作業後のミーティング

作業後は異常箇所や改善点などを話し合い、忘れ物がないように撤収します。

用語解説

VCS(Vacuum circuit switch)
高圧真空コンタクタ。自動的に力率を調整する機械のこと。モータや変圧器、コンデンサなど、頻繁に開閉する機器の開閉に用いられ、特に進相コンデンサの投入と遮断に多く使用されます。

VCB(Vacuum Circuit Breaker)
キュービクルの主遮断装置であり、主開閉装置でもある真空遮断機のこと。

DS(Disconnect Switch)
断路器のことで、電源を回路から切り離すスイッチの一種で、保守点検や修理の際に無電圧状態にすることで感電事故を防ぎます。

GRテストボタン
GRは「Ground Relay」の略で、地絡継電器を意味します。地絡電流が検出されると、送電線に接続された遮断装置を遮断して近隣への波及事故を防ぐ役割があります。

UGS(Underground Gas Switch)
地中線用負荷開閉器のことで、高圧電気を受ける施設で事故を防止するための設備です。

SOG制御装置(Storage Over Current Ground)
発電所から電力を受ける施設で短絡や地絡が発生した際に、UGSやPASを開放(遮断)させて波及事故を防ぐ保護継電器装置です。

SO試験
過電流蓄勢動作(Storage Over Current)の動作試験を言います。

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