現場レポート
未来を担う若者たちが日本一の座を争う技能五輪全国大会in愛知~電工・配管・情報ネットワーク施工職種 電気新聞記者観戦記~
前回記事で取り上げた技能五輪国際大会に続き、今回は、今年11月に愛知県で開催された「第62回技能五輪全国大会」について、現地入りして取材、撮影した電気新聞の林史子記者、山口翔平カメラマンにその様子を伝えていただきました。
目次
1963年から毎年開催されている歴史ある大会
全国大会は国内の青年技能者(原則23歳以下)を対象としており、1963年から毎年開催されている歴史ある大会だ。2年に1度、翌年の技能五輪国際大会の選手選考も兼ねている。
今回は機械や金属、情報通信、サービス・ファッションなどから合計41職種の競技が行われ、976人の選手が出場した。今回メイン会場となったのは愛知県国際展示場。日頃は展示会や大物アーティストによるライブが行われる大規模な会場で、中部国際空港(セントレア)から歩いて行ける距離にある。
私たちの生活を支える3職種を取材!正確性・迅速性、そして美しさを競う、静かで熱い戦いが展開
今回、記者が取材したのは3職種。
- 電工
- 配管
- 情報ネットワーク施工
現代では当たり前のように使える電気や水、インターネットを支える重要な職業だ。全国から集まった選手たちは職種ごとに出された課題に取り組み、正確さや速さを競い合う。近年は国際大会を意識した出題傾向になっている。
電工
生活に欠かせない照明や工場の機械に電力を送るための電線を張り巡らせたり、スイッチやコンセントを取り付けたりするのが主な仕事。ミスがあると停電や火災を招く危険性もあるため、確実な作業が求められる。競技では施工条件に従って、正確かつきれいに仕上げるのがポイントになる。今年度は選手が自ら回路の配置を考える課題も出題されるなど、近年は国際大会を意識してより臨機応変な対応力が問われる構成に変わってきている。
配管
上下水道、給排水衛生設備などの設備を、様々な種類の配管や継ぎ手を組み合わせて工事する仕事。蛇口をひねれば当たり前のように安全できれいな水が出ることも、確実な施工に支えられている。競技では「給水配管」「給湯配管」「排水・通気配管」の3種類を製作。支給される材料を切断したり、接合したりして時間内に組み立てる。水漏れがないのはもちろん、ミリ単位での寸法あわせを求められる緻密な作業だ。
情報ネットワーク施工
現代になくてはならないインフラであるインターネットや電話、ブロードバンド設備など情報通信ネットワークを構築する仕事。目的に合ったケーブルを選び、正しい施工方法でいかに早くきれいに高品質で施工するか、幅広く高度な技能が問われる。近年はネットワークの大容量かつ高速化と、無線ネットワークの普及で施工技術者の役割がますます大きくなっている。競技では正確性、迅速性、美しさを含めた高い品質が評価のポイントとなる。
選手たちは静かに黙々と作業に取り組むが、よりよい結果を残そうと奮闘する熱い姿勢はしっかりと伝わってくる。無駄のない動きでてきぱきと手を動かす様子を、関係者が固唾をのんで見守った。
情報ネットワーク施工は、女性選手が初の金メダルの快挙!来年度は国際大会出場権の予選大会。世界への切符をかける
それぞれの競技で見事に優勝を獲得したのはこの選手たちだ。
- 電工=きんでん / 常本雅哉さん
- 配管=西原工事 / 松本斗我さん
- 情報ネットワーク施工=ミライト・ワン / 吉田陽菜さん
情報ネットワーク施工で女性が金メダルを獲得するのは初の快挙だ。また、電工職種でトーエネックの渡邊望帆選手(敢闘賞)が女性初の入賞。女性活躍の波が広がっている。
自信を持って競技に臨み優勝を果たした選手がいる一方で、あと一歩届かず悔し涙を流す選手も見られた。来年度は国際大会の選考を兼ねた大会が開かれる。
世界への切符を手にするため、選手たちの挑戦が続く。
プロフィール
林 史子記者
2018年入社。中部総局などを経て現在、電気工事、電気設備の保安業務、送配電といった分野を担当する。フットワークを生かして各地の現場を訪れ、きめ細かな取材でタイムリーな記事を多数発信している。
山口 翔平カメラマン
2009年入社。通常時の取材に加え、2019年台風19号、2024年能登半島地震など、災害復旧の現場を取材すること多数。その現場を1枚に凝縮する写真は読者の印象に深く刻まれる。
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