日仏技術対談! フランス人が驚いた日本の研修システムと”おもてなし”精神

更新日:2025.04.22投稿日:2025.04.24

日仏対談

フランス電力需要家保安協会(以下、CONSUEL)の主要メンバー4名が、日本の電気保安の取り組みを視察するために来日。関東電気保安協会の技術研修所やEV用充電設備などを見学しました。

【視察メンバー】
・エマニュエル・グラヴィエ会長
・ルノー・タンベリ代表理事
・マーク・マスロウスキー業務本部長
・フレデリック・メゾン技術・品質部長

今回、上記4名に加え、電気保安協会全国連絡会の武部俊郎会長も参加したインタビューを実施。話を聞く中で日本の保安技術者の優れた部分が見えてきました。

驚き!フランス電力需要家保安協会が称賛した充実の研修内容

日仏1
左から武部俊郎会長、フレデリック・メゾン技術・品質部長、エマニュエル・グラヴィエ会長、マーク・マスロウスキー業務本部長、ルノー・タンベリ代表理事

――日本の電気保安や電気工事の現場を視察されましたが、どう感じましたか?

ルノー・タンベリ(以下、ルノー)「日本は研修のカリキュラムが充実していると感じました。昨日、技術研修所を見学したのですが、低圧から高圧、ガスやディーゼルの発電機などあらゆる設備が用意されており、感心しました。実技研修も非常に優れている。見学をした日は電柱での昇柱作業の練習をしているところで、日本では幅広い技術を学べると感じました」

エマニュエル・グラヴィエ(以下、エマニュエル)「私も同意見です。研修所で素晴らしいと思ったのは、過去の事故を再現した部屋があったこと。電気の現場は常に危険と隣り合わせ。だからこそ安全に進める必要があります。安全への認識を高める部屋を作るなんて、素晴らしいアイデア!」
マーク・マスロウスキー(以下、マーク)「私もアイデアをたくさんもらえました。実は我々も研修センターを作ろうとしています。視察する中で、これは取り入れたいと思えるものがたくさんあったので、今回の来日はとても有意義でした」

日仏2
関東協会の技術研修所を見学

――日本の保安技術者のスキルに触れ、どういったところが優れていると思いましたか?

ルノー「コミュニケーション能力です。フランスでは設備の保安・点検をする際、技術者は電気工事の業者とやり取りするため、住民と話すことはほぼありません。一方、日本の技術者たちは、ユーザーである住民とやり取りをするため身なりや話し方がスマートだと感じました」

――日本の技術者はフランスで通用しますか?

みんな「ウイ (はい)!」

エマニュエル「ただしフランス語を話せることが条件です(笑)」

フランスの技術者に求められるスキルは? 給料は? 平均年齢は?

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スマートハイムシティ成田NTへ行き、日本の住居の電気設備の現状も視察

――フランスで保安技術者になるために必要なものは?

マーク「CONSUELで働く場合、大学や専門学校または短大を卒業していることが条件となります。あるいは現場経験があること。もし採用試験に受かったら3ヶ月の研修を受けてもらい、一定のスキルに到達したら現場で働いてもらいます」

ルノー「スキルを持っていることは重要ですが、社会人として振る舞えるどうかも重要です。先ほど話しましたが、日本の技術者はコミュニケーション能力が優れているので、見習いたい!」

エマニュエル「日本ではコミュニケーション能力を高めるための教育をしており、この研修も我々は取り入れようと思います」

日仏4
EVの急速充電器の設備の保安点検をじっくり見ている視察団の皆さん

――お給料はどれくらいですか?

エマニュエル「CONSUELでは、新人なら最低でも月給2,200ユーロ(1ユーロ=160円換算だと352,000円)は受け取れます。定年退職前になると月3,000ユーロ(1ユーロ=160円換算だと480,000円)までもらえます。これにプラスして1ヶ月分のボーナスを支給されます」

――何歳まで働けるのでしょうか。

エマニュエル「CONSUELの技術者の平均年齢はおよそ40歳で、定年退職は62歳。これは法律で決まっています」

えっ? フランス版WattMagazineが創設される?

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桜咲く4月に来日

――武部会長に質問です。CONSUELとの交流を通じて、フランスのこのシステムは良いと思った部分はありましたか?

武部会長(以下、武部)「フランスでは、一般家庭の保安検査は引っ越しのタイミングでできると聞き、これは良いと感じました。日本の場合は4年に1回と決まっていますが、忘れられたり断られたりするケースがある。フランスのようにタイミングが決まっていると確実に点検できますね」

日仏6
お土産を渡すエマニュエル会長

――フランスの電気保安業界が抱えている課題はありますか?

ルノー「フランス全般に言えますが、技術者の人材確保です。電気の分野だけでなく技術系の職業は、若者から人気がありません。そのためこの仕事は将来性があり、自分のスキルを活かせるというメッセージを発信したいのですが、なかなか上手くいかないんです」

武部「それは日本も同じです。わたし達は電気保安や電気工事の仕事を世に広めるため「WattMagazine」というWEBマガジンを創設し、情報発信に努めています。フランスではこういったメディアはありますか?」

ルノー「フランスには専用メディアがありません。プロモーション活動はしていますが、定期的な情報発信はできていないんです」

エマニュエル「WEBマガジンとは良いアイデアですね。WattMagazineのフランス版を作りたい!」

――ぜひWattMagazineのフランス版を創設してください!

みんな「ウイ (はい)!」

エマニュエル「創設される日を楽しみにしてください!」

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