現場インタビュー
失敗してもいい。挫折後に資格を取得し、天職と出会った電気主任技術者の奮闘ストーリー
誰しもが人生の中で一度は失敗を経験するもの。大事なことは挫折した後に、そのままネガティブな気持ちを引きずるのではなく、そこからどう頭と行動を切り替えるかです。東北電気保安協会で働く高橋宙さんは定時制高校へ入学。その後努力を重ね、最終的に天職と出会うことができたのです。頑張る源となったのは?高橋さんの奮闘ストーリーをお送りします。
高校受験失敗がきっかけで電気と出会った。
――はじめまして、WattMagazine編集部です。本日はよろしくお願いいたします。
「はじめまして、東北電気保安協会の高橋宙と申します。現在は仙台中央事業所に所属し、電気主任技術者として働く日々を送っています。学校や病院などの大きな建物では高圧の電気設備が設置されているんですが、その電気設備の点検・保守が私の仕事となります。作業着を着てヘルメットを被り、現場へ赴くことが多いですね」
――高橋さんと電気の出会いを教えてください!
「話は中学3年生の頃に遡ります。当時は高校進学するにあたり、勉強不足だったため、一度、高校受験に失敗しました。当時の私は、安易に高校へ行かずに就職しようと考えていたのですが、両親から高校だけは卒業して欲しいと言われてしまい・・・(苦笑)。そこで、入学できる高校を探していたところ、条件に合致したのが定時制高校だったんです。その高校の電気科に進んだことが私と電気との出会いでした」
――受験に失敗し、期せずして工業高校の電気科へ行かれたんですね。定時制高校はどのようなスケジュールになっているのでしょう。
「授業は夕方5時30分から夜の9時まであります。全日制高校が3年で卒業できるところを定時制高校は4年かけて卒業します。その中には社会人もおり、仕事帰りに直接学校に来るなど、忙しい日々を送る人も数多くいました」
――現在は電気主任技術者として働く高橋さんですが、なぜこの仕事を選んだのですか。
「電気主任技術者として従事するための資格である『電験三種(第三種電気主任技術者)』と出会ったことが一番の理由ですね。学校の先生から電気科で学んでいるのだから、電気関連の資格を取ってみてはどう?と勧められ、第二種電気工事士と第一種電気工事士を取得しました。その後、電験三種という難関の資格があると教えてもらい、その時はまだ3年生でした。卒業まであと1年あるし、今なら勉強に集中できると考え、資格取得に挑戦しようと思ったのがきっかけです」
勉強嫌いが一転!勉強漬けの日々に。きっかけは同級生
――勉強が苦手という高橋さんが資格勉強に夢中になるなんて、非常に大きな変化ですね!
「今でも勉強は苦手ですが、同級生の中には日中働き、夜は学校で勉強する毎日を送っている人も少なくありませんでした。そういった姿を見て、自分自身頑張ろうと鼓舞し、資格勉強に励みました」
――電験三種の試験に向け、どんな努力をしたんですか?
「授業が始まる2時間くらい前に学校へ行き、自主勉強していました。授業が終わったら教室に残り、そこでも勉強していましたね。 試験は秋に実施されるため、夏休みを返上して勉強に打ち込みました。そんな私に対し、先生も手厚くサポートしてくれたので、非常にありがたかったですね。資格の勉強をしたいと相談したら、勤務時間でもないのに付き合ってくれて。そういったサポートがなければ、ここまで頑張れなかった気がします」
――試験の結果は…?
「恥ずかしながら、まぐれで1科目合格しただけでした(苦笑)。電験三種は4科目の試験があり、全科目の合格が必須です。そのうち1科目だけ合格し、あとの3科目は不合格でした。せっかく受験したのだから、卒業後も勉強して挑戦しようと思っていたところ、学校の先生から、東北電気保安協会なら働きながら電験三種の勉強もできるよって教えてもらいました。勉強しながらできる会社はなかなかないと思ったので入社したいと考えました」
――転んでもただでは起きないその姿は、非常に勇気づけられますね!東北電気保安協会に入るためにどんな努力をしましたか?
「まずは、先生に相談しました。その後、先生が東北電気保安協会の人事にかけあってくれて、入社試験を受けさせてもらうことができたのです。記述試験もある程度解けました。面接では電験三種の4科目のうち、1科目合格したことをアピール。入社したら残りの3科目の合格を目指して頑張りますと伝えました。その後、無事内定をもらうことができました」
「ありがとう」の言葉を言ってもらえるこの仕事をしていて良かった~!
――入社後はどんな社会人生活を送りましたか?
「入社後すぐに現場での作業が毎日続くのかと思っていましたが、事業所や研修センターでの電験三種の勉強がほとんどでしたね。今思えばこんなにも資格取得に力を入れている会社は中々ないと思います。それ以外は先輩方が気にかけてくれて、現場に連れて行ってもらい、仕事を教えていただきました」
――電験三種の資格はいつ取得できましたか?
「なんとか入社2年目で取得しました。この時、もう電験三種の勉強をしなくていいんだとホッとしたのを覚えています」
――良かったですね。電験三種の資格があると、現場での仕事の幅が広がりますね。電気主任技術者として第一歩を踏み出した高橋さん、働いてみて「思っていた仕事内容と違う!」といったギャップはありませんでしたか?
「特にありませんでしたね。強いて言えば、お客さまとのコミュニケーションが大事だと感じたくらいです。現場仕事なので技術的な仕事だけかと思っていましたが、点検先のお客さまと対話する機会が多く、コミュニケーション能力が問われるというのは意外でした」
――どんなところにやりがいを感じますか?
「お客さまから感謝されたときに一番やりがいを感じます。 電気が使えなくなって困っているとお客さまから相談があった際に事故出動し、電気を復旧するとお客さまから『ありがとう』という感謝言葉をもらえる。そうやって感謝された時、この仕事をやっていて良かったと思います。
また、現場によっては自分だけではどう対応していいか分からない時があります。そういった時に同僚、上司に悩みを相談できる環境があるので、自分は恵まれた環境で働けているなと実感しています」
――仕事が好きだと言えるなんて本当に素晴らしいことです。では最後の質問になります。高橋さんにとって“電気”とは?
「電気は日常生活に欠かせないものです。それをお客さまに安全・安心に使っていただけるよう、日々点検しています。 今後もそれを第一に仕事に取り組んでいきたいです」
<高橋宙さんプロフィール>
東北電気保安協会の仙台中央事業所に所属。定時制高校を卒業後、電気設備の保守管理業務に携わり、入所2年目で第3種電気主任技術者の免状を取得するとともに、7年目となる現在は電気主任技術者として多くのお客さまを担当している。なお当協会に定時制高校より応募し、採用された努力家な一面も。
<執筆>
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