現場インタビュー
仕事にダッシュ! この10年を走り抜けて気づいた「自分の到達点」
長く仕事に従事していれば、成功も失敗も経験するもの。そうした体験を経て、人は少しずつ大人になっていきます。中国電気保安協会で働く小笠原諒さんは、高校卒業後に社会人になって今年で10年。この間、嬉しいこともあったし、自分の未熟さを痛感したこともあったと言います。今回は小笠原さんに、この10年を振り返っていただき、働く中で気づいた、「仕事の喜び」を語っていただきました。
電柱に登れなくても大丈夫。フォロー万全の職場に感謝!
――まずは小笠原さんの仕事内容を教えてください。
「中国電気保安協会の東広島営業所に所属し、保安業務従事者としてこの営業所が管轄するエリアの工場や病院など、大きな施設の高電圧の電気設備の保安管理業務をしています。定期的な点検だけでなく、新設の建物で使用する電気設備の検査や試験業務をすることもあります」
――なぜこの仕事を選んだのですか?
「工業高校の電気科に通っていたんですが、当時は将来の目標や進路を真剣に考えず、なんとなく過ごしていました。ただ、高三になって卒業後の進路を真剣に考え始めたとき、学校の先生から中国電気保安協会はいい職場だよと教えてもらい、就職活動を進めていく中で、ここで働きたいと思うようになったんです」
――実際に働いてみて、どうでしたか?
「この仕事は、電験三種(第三種電気主任技術者)の資格がないと働けません。ですが、入社時に資格がなくても勉強をしながら働けるところが良かった。それに、仕事や試験のことなど、気軽に相談できる同僚や先輩もいるから、職場環境も申し分ありません。仕事そのものも楽しいですよ。さまざまな工場やお店の建物の奥に入って作業するので、工場見学に来たようなワクワク感があります。ただ電柱を登るのは想定外でしたが…」
――高いところは苦手?
「はい…。高所恐怖症なので、入社1年目の実習時に『電柱に登る訓練をします』と言われた時は、耳を疑いましたね。で、実際に上ってみたら、案の定(電柱の)半分までしか登ることができず、途中でリタイア。先輩から『無理をしてまで電柱に登らなくてもいい。その代わり、下でちゃんと作業をしてね』と言われて、苦手な電柱の昇降がなくなりました。誰でもできること、苦手なことってあると思うんです。できないことは無理強いせず、できることを頑張る。そうやって周囲がフォローしてくれるのは、本当にありがたいです」
蛇に遭遇! 予想不可能な出来事を体験
――仕事の中で、印象的な出来事はありましたか?
「あります、あります。お客さまから『電気が急に止まってしまいました』とSOSの連絡が来たので、現場へダッシュしたんですね。原因を探るべく、電気設備をチェックするために扉を開けたら、蛇がにょろ~と顔を出してきて。原因はこの蛇だったんです。蛇のせいで安全装置が起動し、電気が止まったようで、すぐに蛇を外に逃がしましたね。しかし、あの時は本当にびっくりした~」
――外で作業をするので、動物との遭遇は、このお仕事をする上で“あるある”ですね。
「そうですね。他にもハチに遭遇したことがあります。作業中、ブーンと音がするのでハエかな?と思って、振り払ったら、なんと、ハチ!!ふと見上げると、スズメバチの巣が木にぶらさがっていて、ヒヤリとしました。山で作業する時は、猿と鉢合わせすることもありますよ」
――仕事の中で失敗したことは?
「たくさんあります! ある日、無線機を使いながら仕事をしていたら電気が止まってしまい、あたふた。先輩と一緒に原因を探っていたら、その無線機が理由だと発覚しました。無線機を近くで使うと電気を流さなくなる装置があり、その装置が起動してしまったんです。他にも夜間作業中に眠くなって電気設備に頭をぶつけるとか…失敗エピソードはいくらでもあります!」
――失敗は誰にでもありますよね。どんな時に喜びを感じますか?
「人から感謝してもらえる時ですね。電気設備が壊れて困っているお客さまの元に駆け付けて、直したら『ありがとう』と言ってもらえる。その言葉を聞いた時、ジーンとします。この仕事は、頑張った分だけ成果が出るんです。しっかり準備していれば、きっちり仕事を終えられる。そんな時は、達成感と共に、『今日も一日、安全に仕事を終えられた』という安堵感が沸き起こり、この仕事をしていて良かったと実感します」
技術者としても社会人としても成長できた。そして自分の足りない部分も分かってきた
――中国電気保安協会で働き始めて10年目(2020年10月時点)。高校生の頃と今の自分を比べ、どういった部分が成長できましたか?
「10年前の自分では出来なかった作業ができた時、成長したな~と感じます。たとえば、停電点検をスムーズに進めたり、他の人からわからないことを聞かれたときに答えられる頻度が上がったりした時でしょうか。
あとは、どんな時でも冷静に対処できた時。あるお客様と話していたら、その方が話し込んでいくほど感情的になってしまって。昔の私なら、うろたえていたでしょうが、その時は、お客様の話を冷静に聞き、冷静に対応できました。とはいえ、まだまだ発展途上にいるため、足りない部分もたくさんあります。たとえば、話すこと。会議で意見を求められても、自分の考えを上手くまとめられず、グダグダになってしまうんです。今こうしてインタビューを受けているこの時間も緊張しています…」
――えっ、緊張していますか? ちゃんと喋れていますよ!
「そう言っていただけると、嬉しいです」
――ちなみに休日はどんなことをして過ごしていますか?
「ツーリングをしています。2年前に、自分へのご褒美としてZRX1200 DAEG(カワサキ)のバイクを買いました。休みの日になると、隣の山口県にバイクで出かけています。山口県には角島や秋吉台など、バイク乗りにはたまらないコースが多いので、ツーリングにはオススメです!」
――休日を満喫していますね。
「たまに休日出勤する時がありますが、代休も希望通りに取得できますし、ワークライフバランスはきちんと取れています。お給料にも満足です!」
――満足できる仕事に就けているなんて、非常に羨ましいです。では、最後の質問になります。小笠原さんにとって、電気とは?
「無くてはならないもの。物を動かすためには、電気が不可欠です。そんな電気に携われる仕事に就けて、幸せだなって思います」
<小笠原諒さんプロフィール>
中国電気保安協会所属。保安業務従事者として、電気主任技術者業務を外部委託により委託され、月次点検や年次点検などの定期点検や事故応動および竣工検査等も行っている。所有資格に、「第3種電気主任技術者」(平成27年度)、「第2種電気工事士」(平成19年度)。
<執筆>
野田綾子