不景気なんて関係ない。安定の仕事ができる、それが電気管理技術者だ!

更新日:2021.01.13投稿日:2021.01.13

2020年に大流行した新型コロナウイルスは、全世界に経済の低迷をもたらしました。それによって、仕事を失った方や大幅な収入減になった方も少なくはありません。しかし、経済の変動を受けない職業がここに。それが電気設備を点検する、“電気管理技術者”です。参入するには資格と経験年数が求められる技術職ですが、北海道電気管理技術者協会に所属する石田浩倫さんは、「やる気さえあれば誰でもできる」と熱弁。石田さんのキャリアと共に、仕事の魅力を語っていただきましょう!

ピンチはチャンス! 会社員から無職に。そしてフリーランスの電気主任技術者へ転職

――はじめまして、WattMagazine編集部です。石田さんは現在、電気管理技術者として働いているそうですね。石田さんの今までのキャリアについて教えてください。

 

「私は高校を卒業後、鉄鋼工場に就職しました。そこでは66,000Vという大きな電圧を扱う仕事に就き、毎日、順風満帆な会社員生活を送っていました。しかしある日、工場が閉鎖になって…。つまり、無職になってしまったんです。家族もいますし、どうしようかと悩んでいたら、先に退職した先輩の言葉が頭によぎりました。その先輩は、フリーランスの電気管理技術者として働いて、前から個人で働く楽しさを教えてくれていたんです。幸い、この仕事をするのに不可欠な資格(第二種電気主任技術者)は持っていたので、すぐに仕事ができる。これはチャンスだ!と一念発起して、独立しました」

――ピンチをチャンスに変換していますね。具体的にどんなお仕事をしているのでしょう。

 

「店舗や病院、ビルなどの大きな建物では、6,600Vという大きな電圧で電気を受けています。ただ、そのまま使用するのは危険を伴いますので、100V200Vに変換する必要があり、変換するための電気設備が各建物に置いているんです。その電気設備を維持管理し安全に使えるよう、定期的に点検することが、僕の仕事。建物の設置者は、常駐する資格者、つまり電気主任技術者を置くよう法律で定められていますが、それが出来ない場合、外部に委託することが可能です。委託業務は、全国にある電気保安協会か、電気管理技術者協会に依頼する場合がほとんどです」

 

――電気保安協会と電気管理技術者協会、両者の違いは何でしょうか?

 

「簡単です。前者は会社組織のようなもので、後者は個人事業主が集まった組織。両者とも株式会社ではなく、一般財団法人と一般社団法人なので非営利団体となります。僕は後者の北海道電気管理技術者協会に所属し、個人事業主として仕事をしています。

コロナで世界経済は低迷状態。そんな世の中でも電気の仕事は安定している

――2020年は新型コロナウイルスに世界中が翻弄されました。コロナにより経済が低迷し、仕事を失った方や収入が生活環境が激変した方も。石田さんは、コロナの影響を受けましたか?

「世の中は大変な事態に陥りましたが、僕の場合、ありがたいことに今のところ影響は受けていません。というのも、電気設備の点検をすることは法律で定められていますので、仕事が減ることはないんです。不景気に関係なく、仕事のオファーをいただいています」

 

――インフラに関するお仕事なので、安定しているんですね。

 

「そうですね。未来のことは分かりませんが、現段階で仕事がなくなることはありません。気を付けて扱わないと事故を引き起こす電気。100Vの電圧でも命を落とす危険がありますから。安易な気持ちで相手をしてはいけないものなので、法律で扱い方を決められています。また、この職種は人材不足。誰かに仕事を取られるような心配は、いまのところありません」

 

――人材不足とはいえ、資格がないと参入できないことがネックになるのでは。

 

「電気主任技術者の資格は必須ですし、経験も求められます。資格を取得してから3~5年、経験を積まないと、管理技術者として開業することはできません。資格勉強と経験年数を要するので、参入に躊躇してしまいますよね。でも、やる気さえあれば、道は必ず開けます。北海道電気管理技術者協会に50代になって所属された技術者のかたもいますが、その方は異業種でお仕事をしていました。ゼロから独学で資格を取得し、知り合いの下で見習い経験を積み、そこから一人前の技術者として独立したのです」

――始めるのに遅いことは何もないんですね。

 

「そうです! 電気管理技術者はいくつになっても挑戦できますし、定年のない仕事です。身体が動くかぎり、稼いでいけるのも大きな魅力ですね」

北海道胆振東部地震で痛感した“電気がある当たり前”の生活の大切さ

――収入面ではどうでしょうか?

 

「会社員時代と比べ数倍になりました。個人の頑張り次第で年収は変動しますが、僕はせっかく働くなら、稼いだ方がいいと思っています。なので、動けるうちは働けるだけ働いて、報酬をいただくようにしています。もちろん、ある程度の収入を稼ぎつつ、自分の時間をしっかりと確保するという働き方もできます。定年退職後に個人事業主として独立した方々は、自分の時間を大切にし、趣味を満喫されていまする方も多いようです。自分の働き方を自分で設計できるのがこの仕事の良さなんです」

――「稼ぎたいけどプライベートも充実させたい」と思っている若い人に勧めたくなりました!

 

「ぜひ若い方に入ってきて欲しいです! ゼロから始めるには不安があるでしょうが、先輩である僕らがしっかりとサポートしますので、ぜひ、この世界に飛び込んできてみてください」

 

――では最後の質問になります。石田さんにとって“電気”とは?

 

「空気のようなものです。空気ってあって当たり前ですが、ないと生きていけない大切なもの。実は過去に電気の大切さを実感したことがあったんです。20189月に北海道胆振東部地震が発生し、被災エリアはもとより、北海道全域が大規模な停電に見舞われました。その時、今の生活にはあって当たり前の電気がどれだけありがたいものなのかを痛感しました。そんな電気に携わる仕事をしている者として、安心・安全を保つ努力をし続けていかねばならないと思っています」




<石田浩倫さんプロフィール>

一般社団法人「北海道電気管理技術者協会」所属。自家用電気工作物の電気保安に関する業務を行う個人事業者。事業用電気工作物(自家用電気工作物を含む)の工事、維持、運用に関する保安の監督。具体的には、工場・ビル等の電気設備の点検・保守を行っている。第二種電気主任技術者、第1種電気工事士、エネルギー管理士を所有。

 

<執筆>

野田綾子

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