生活と電気
観葉植物の知られざる効果とは?メリットとオススメ植物8選
疲労、不安、肥満、散漫な集中力、モチベーションの低下、不眠、弱い意志力…。
年に5000本の科学論文を読み続けるサイエンスライターにして、7万部突破の話題書『最高の体調』の著者・鈴木祐氏は、「こうした現代人の不調は、『現代の環境』と『遺伝』のミスマッチにある」と言います。「数百万年近く自然と共に暮らしてきた人類にとって、自然と切り離された現代の生活はあまりにも異例なもの。そのため、私たちの体をうまく機能させるには、自然と触れ合うことが重要になってきます。自然は人体の疲労を回復させ、人間の感情システムのバランスを整えてくれることが科学的にも証明され始めている」とのこと。この記事では今すぐ実践できる簡単な方法をお伝えします。
目次
「偽物の自然」にもリラックス効果がある
いくら自然が体にいいと言っても、私たちは急に森での生活を始めるわけにもいきません。ならば、自然のメリットが得られる最低ラインはどこにあるのでしょうか? スタートとして効果的なのは、自然音を聞くこと、または自然画像をみることです。川のせせらぎ、木々を吹き抜ける風の音、雄大な森林の映像、波が押し寄せる海の光景など、種類はなんでも構いません。まずはデジタルのデータを使い、スピーカーやモニタ越しに自然との接触回数を増やしましょう。 大自然と共に暮らしていた狩猟採集民とくらべればささいなものですが、自然に飢えた現代人の脳には、たとえ偽物の自然でもかなりのインパクトがあることがわかっています。
科学的に見た「偽物の自然」の効果とは?
たとえばアムステルダム自由大学の実験では、次のような結果が出ています。 60人の学生に複雑な数学の問題を解かせて精神的なストレスをあたえた後、半分には『緑が豊かな公園の写真』を5分だけ見せ、残りには『一般的な都市の光景』を眺めるように指示。それから全員の自律神経を計測したところ、公園の写真を見た学生は2倍も副交感神経が活性化し、心拍数も有意に低下していたのです。自然の写真を5分ほど眺めるだけでも、かなりのリラックス効果が得られるようです。 また、自然の写真ほどではないものの、自然音についても研究が進められています。2017年にサセックス大学が行った実験では、風の音や虫の声を5分25秒ほど聞いた被験者は、車のエンジンやオフィスのざわめきを聞いたときよりも、有意にリラクゼーション反応が起きていました。まずはPCやスマホの壁紙を森や海の風景に変え、通勤電車の中では風や潮騒の音を聞くのが、いまの暮らしに自然を取り込むはじめの一歩になります。
観葉植物を置くことのメリット
自然の写真と音声で副交感神経が鎮まったら、次のステップです。ここからは、一歩進んで「観葉植物」を取り入れてみましょう。やはり狩猟採集民の暮らしにはほど遠いものの、こちらも多くのデータで効果が示唆されています。
①副交感神経を活性化&ストレス軽減
ノルウェーで行われた実験では、385人のオフィスワーカーの年齢や仕事内容といった因子をコントロールしたうえで重回帰分析を行ったところ、はっきりとした違いがみられました。デスクの上に観葉植物を置いた従業員ほど主観的なストレスが低く、病気で会社を休む回数は少なく、仕事の生産性まで高い傾向が見られたのです。 このような現象が起きる理由には諸説あるものの、1998年のデータでは、観葉植物の近くで働くオフィスワーカーは肌荒れが減ったとの報告も出ており、やはり「副交感神経の活性化によって体内の炎症が治まった」効果が大きいようです。
②幸福感と作業効率を上げる
さらに嬉しいことに、観葉植物には幸福度や集中力を上げる効果も確認されています。 350人のオフィスワーカーを対象にしたある実験では、観葉植物を前にしながら作業をした被験者は幸福感が47% アップし、作業の効率が38%も上がったそうです。これは、観葉植物のおかげで作業中の緊張がやわらいだために起きる現象で、心理学の世界では「注意回復理論」と呼ばれます。身近に置く観葉植物の種類はなんでも構いません。多くの実験ではポトスやドラセナを使うのが定番ですが、基本的には自分が好きな植物を選べばいいでしょう。
NASAが推奨する「健康にいい」観葉植物一覧
ただし、ここでは観葉植物選びの参考として、1989年にNASAが行った「クリーンエア研究」のデータを紹介しておきます。 ・スパティフィラム(Peace lily) 日陰に置くことでベンゼンとトリクロロエチレンの両方を吸収してくれる。ただし、葉の部分にシュウ酸カルシウムがふくまれており、体内に入れば体調を崩すことも。そのため子どもやペットがいる家庭には不向き。 ・ポトス(Pothos) ホルムアルデヒドを吸い込む効果が認められている。 週に1度の水やりでも十分なので初心者向け。 ・セイヨウキヅタ(Ivy) ホルムアルデヒドを取り除くのに有効。直射日光でも日陰でも普通に育つが、やはり毒性を持っているので子どもやペットがいる家庭には不向き。 ・キク(Chrysanthemum) ベンゼンとホルムアルデヒドをフィルタリングしてくれる。 ・ガーベラ(Gerbera daisy) ベンゼンとトリクロロエチレンの両方を吸収してくれる。 ・サンセベリア(Sansevieria) ホルムアルデヒドをフィルタリングしてくれる。水やりが少なくてもいいのでメンテナンスは楽だが、水の加減を間違えると枯らしやすい。 ・チャメドレア(Bamboo palm) ホルムアルデヒドをフィルタリングしてくれる。直射日光を避ければ、毎日の水やりが不要なので育てやすい。 ・ツツジ(Azalea) ホルムアルデヒドをフィルタリングしてくれる。現在のツツジは品種改良がされていて育てやすい
③空気清浄効果
これは、観葉植物の空気を清浄化する働きを調べたもので、一部の品種には、ベンゼンやホルムアルデヒドといった大気中の有機化合物を吸い取る作用が認められました。つまり、観葉植物は天然の空気清浄機としてシックハウスの対策にも使えるわけです。 植物の清浄効果を高めるには、「およそ10平方メートルごとに、直径15~20センチの鉢植えを1個置く」のがベストです。
環境が及ぼす影響はとても大きい
「環境」が私たちに及ぼす影響はとても大きなものです。中でも今回紹介した「自然」はその影響が突出していることが分かっています。うまく活用して、スッキリ心地の良い毎日を過ごしましょう。
元記事「観葉植物の知られざる効果とは?メリットとオススメ植物8選」は2019年1月9日にBUSINESS LIFEに掲載されたものです。
観葉植物の知られざる効果とは?メリットとオススメ植物8選 | ビジネスライフ(BUSINESS LIFE)
疲労、不安、肥満、散漫な集中力、モチベーションの低下、不眠、弱い意志力etc……いずれも現代人につきものの悩みである。 年に5000本の科学論文を読み続けるサイエンスライターにして、7万部突破の話題書『最高の体調』の著者・鈴木祐氏は、「こうした現代人の不調は、『現代の環境』と『遺伝』のミスマッチにある」と言う。 「数百万年近く自然と共に暮らしてきた人類にとって、自然と切り離された現代の生活はあまり