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身の回りにあるギモンを解決!扇風機の常識を覆した羽のない扇風機はどうやって風を送るの?
最近、羽がないスリムな形の扇風機が多く販売されています。扇風機といえばその形を思い浮かべる方も多いのではないかと思いますが、今までは羽がついた扇風機が一般的でした。
羽がある扇風機と、羽のない扇風機では、どのような違いがあるのでしょうか。
流体力学の原理を利用して、送風量の何倍もの風を送る
羽のある扇風機は、風車のような羽を回して風を起こします。風量を大きくしたい場合はそれだけ大きな羽が必要になり、必要な電力も多くなります。これは、誰にでも理解できるシンプルな構成です。 羽のある扇風機がずっと業界では販売され続けていましたが、そこへの革命的な変化を起こしたのが羽のない扇風機の登場です。概略的な図を下記で紹介しましょう。
まず、下の支柱部分から空気を取り込みます。「羽がない」という触れ込みですが、実はこの部分に小型のファンがついていて、上部の中空円筒部分の細かいスリットから風を送る構成になっているのです。中空円筒部分から放出された風は周りの空気も巻き込んで移動するという流体力学の粘性流体の原理を応用して空気を送ります。 風を送りたい方向に空気が流れている状態を作ることで、中空の円筒内部を通って風の流れを作るというものです。中空の前後の空気も一緒に移動するため、スリットから出てきた風量以上の風量が送られます。
この構成のメリットは、取り込んだ空気の数倍もの風量を送ることができるため、同じ風量を取り出すのに羽のある扇風機よりも小さなファンで完結できること。また、縦長のスリムな形のため、収納にも便利です。羽のない扇風機は最新技術を応用した画期的な商品として大ヒットしたのです。
「扇風機はこの形」という固定観念を壊す発想
羽のない扇風機が市場に登場する前は、扇風機はすでに形も決まっていて、確立された技術であり、何も改善の余地が残されていない、とまで考えられていました。 流体力学は、ジェットエンジンや航空機などを開発する分野の基礎研究の結果であり、扇風機とは無関係にも思われますが、空気も流体力学の分野では研究の対象となっていることから、こうした応用例が生み出されたというものです。 決まり切ったものの形を大きく変える、というのはなかなかできるものではありません。 こうした常識への挑戦が、大ヒット商品や大きなイノベーションを生むのです。
プロフィール
西海登
本業の技術職の傍ら、webライターとして活動。小説家になりたかった過去を引きずりながらも、本業でも関わりのある技術分野の解説と経済分野を結び付ける記事を得意とする。
本業では、ビルメンテナンス業界から産業用機器の電気設計職へ移り、設備関連の保守点検から構築に関する職業を一通り経験、近年ではIoT関連の仕事にも携わり、ライターとしてもIoT分野の記事執筆の実績も増えている。2015年頃から、小説家になりたかった過去を生かせるのでは?と考え、ライティング業務をスタート。朝4時に起きて執筆活動をする日々を送っています。