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量子の重ね合わせで計算??今注目の量子コンピュータって何?
アインシュタインの相対性理論や原子力発電のエネルギー源となる核分裂。言葉を聞いただけで難しそうな感じがしますね。これらは水素や酸素などに代表される元素をさらに細かくした量子のふるまいを研究した学問「量子論」から来ています。
難しそうな印象を受ける量子ですが、その量子を使って計算を行う「量子コンピュータ」が実用段階に入ったということで、近年、注目されているのです。
量子力学の原理を応用して計算を行うコンピュータって?
宇宙にあるブラックホールや、重さを持たない粒子ニュートリノなど、言葉だけは聞いたことがある人も多いでしょう。これらの研究を行う量子力学は、実生活と無縁ではありません。 量子コンピュータは、元素よりも細かい量子の動きの法則である重ね合わせという動きを観測して計算を行うコンピュータです。言葉で説明すると分かりづらいのですが、従来のコンピュータとは全く異なる計算方法で計算を行います。たとえば、降水確率を計算するスーパーコンピュータは、過去のデータから類似の条件を数万通りのシミュレーション計算を行って、雨が降る確率が何%かを割り出します。これに対して、量子コンピュータは量子に今の気象データを入力して、気象現象の法則等の条件を入力すれば最も起こりそうなところで落ち着きます。動きが落ち着いた部分が量子コンピュータの割り出した気象予測となります。
量子コンピュータは計算が早く細かい状況を把握できるため、今までの気象予測では難しかった局地的な大雨なども予測しやすくなるというメリットがあります。それ以外にも、複数の訪問先がある場合、どの順番で回れば最も距離が短く効率的か?といった最適化に関する計算も得意です。従来のスーパーコンピュータは同じ最適化や予測の計算を行う場合、一回一回の計算を終わらせてから確率で計算するため、無駄が多い状態でもありました。量子コンピュータはこうした無駄を排除した効率的なコンピュータといえます。
量子コンピュータは用途によってはすごい力を発揮する
量子コンピュータが一般的になったからと言って、今までのコンピュータがなくなるというわけではありません。もっとも影響を受けるのは気象予測などを行うスーパーコンピュータです。一説には同じ計算をスーパーコンピュータで行うと数万年かかるものが、量子コンピュータではわずか数分で完了するという驚異の結果も発表されています。 量子コンピュータの開発が進めば、いろいろなものの予測や最適化の計算が行われやすくなり、より便利で効率的な世の中の提案なども増えていくのではないでしょうか。
プロフィール
西海登
本業の技術職の傍ら、webライターとして活動。小説家になりたかった過去を引きずりながらも、本業でも関わりのある技術分野の解説と経済分野を結び付ける記事を得意とする。
本業では、ビルメンテナンス業界から産業用機器の電気設計職へ移り、設備関連の保守点検から構築に関する職業を一通り経験、近年ではIoT関連の仕事にも携わり、ライターとしてもIoT分野の記事執筆の実績も増えている。2015年頃から、小説家になりたかった過去を生かせるのでは?と考え、ライティング業務をスタート。朝4時に起きて執筆活動をする日々を送っています。