現場レポート
電気予報士・伊藤菜々さん取材レポート「黒部ダムに行ってきた!」
黒部ダムと言えば、映画「黒部の太陽」でも有名な、富山県にある黒部川に建設された日本で有数の大規模な水力発電用のダム。戦後の電力不足のなか、関西電力が意を決して大阪方面の電力供給を行うために建設しました。当時は重機などもなかったため、男性たちが手でトンネルを掘り進めたと言います。そんな黒部ダムの集大成を、今回は体験レポートでお届けします!
黒部ダムについておさらいしよう
黒部ダムは黒部川に建設された水力発電専用のダムで、10キロメートル下流の黒部川第四発電所こと、通称“くろよん”に水を送って発電しています。1956年に着工、1961年に送電が始まり、1963年に完成しました。当時の関西は深刻な電力不足に悩まされており、頻繁に停電もあったそう。今では考えられないですよね。当時の関西電力の太田垣社長は電気の安定供給を実現するために、黒部ダムの建設を決意。黒部は立山連峰の険しい山々に覆われており、道もない未開の土地でしたが、関西の電力不足を解決するには黒部ダム建設しかなかったため、資本金の5倍もの金額をつぎ込んだのです。
総工費は当時の費用で513億円、作業員はのべ1,000万人。そして、殉職者は171人にも及んだそうです。関西電力さんのyoutubeチャンネルや映画「黒部の太陽」を観るとイメージが湧くかと思いますが、当時の技術で黒部ダムを完成させるには、長く苦難の多い道のりでした。完成当時は、大阪府の電力需要の約半分を賄うほどの大きな発電所となり、現在も人々の生活を支え続けています。
黒部ダムへは富山側ルート、長野側ルートがある
ここからは、見学レポートとして黒部ダムの魅力や見どころについてお伝えしていきます。 黒部ダムは山の中にあるため、冬季は閉鎖しています。見学へ行くには、夏のさわやかな時期をお勧めします。黒部ダムへは富山県の立山黒部アルペンルートから行く方法と、長野県の扇沢駅から行く方法があります。立山黒部アルペンルートは、ケーブルカーやロープウェイを乗り継いで山の景色を味わえるルートです。ツアーによっては富山側から入り、長野へ抜けるツアーもあるようで、いろんな側面から楽しむことができるのです。 私は長野側から訪問しました。長野側の玄関口の扇沢駅から電気バスに乗って黒部ダムへ行きます。扇沢駅には黒部ダムの歴史を展示している扇沢総合案内センターもあるので、見学してから行くとより一層黒部ダムを楽しめますよ。
ついにお待ちかねの電気バスです!関西電力さんのマークが入った電動のバスが、昔、男性たちが掘ったトンネルの道を進んでいきます。このトンネルは黒部ダムへの物資や人の通り道として手で掘られたものです。掘り進めている途中、破砕帯という水が噴き出る地層があったため、この80メートルの破砕帯を突破するのに7ヵ月もの歳月がかかりました。今では電気バスでたったの16分ですが、地道に掘って開通したと思うと、感極まります。
黒部ダムの見どころ
黒部ダムに到着したら、展望台まで220段の階段を上ります。上りきった先に広がるのは、目も眩むような絶景!立山連峰の綺麗な山々に囲まれたダムと放水の景色が広がります(黒部ダムと検索するとよく出てきます)。標高はなんと、1,454メートル。扇沢駅で見たのは霧がかった空でしたが、霧の上にある黒部ダムは澄んだ青空が広がっていました。
黒部ダムは真ん中部分のアーチ状ダムとウイング部分は重力ダムの構造を組み合わせています。ダム両側の岩盤が想像以上に脆かったことから、水圧を下向きの力に変化させて、岩盤に支えさせる設計になっています。ダム上部の遊歩道を歩くと対岸へ行くことができます。遊歩道の長さは500メートル、立山の自然豊かな山に囲まれてハイキングとしても最適です。
ダムの横には散策ルートがあり、黒部ダム建設の歴史を解説している展示室がありました。そこには建設の歴史やから関西電力の決断、破砕帯など、興味深い展示がたくさん。
おみやげを売っている売店もあり、黒部ダムグッズだけでなく、立山のご当地グッズも並んでいました。私が頭に巻いているタオルもここで購入したものです。 また、「くろにょん」という黒部ダムの可愛いマスコットキャラクターのグッズがひしめいていて、心を奪われました。
あれこれを散策していると、ここでしかできない? 関西電力さん公認の黒場ダムガチャを発見!さっそくチャレンジです。四季折々の黒部ダムや、黒部ダムカレーのフィギュアが出てきます。とてもレアなアイテムです。 併設されたレストランの名物は、黒部ダムを模した「ダムカレー」。味はグリーンカレーと、ビーフカレーの2種類ですが、わたしはグリーンカレーのカツカレーをいただきました。ボリューム満点で元気が出ます。売店にはダムカレーがお家でも作れちゃう、ご飯の型押しも売っています。
黒部ダムは楽しく観光できて電気のありがたみがわかる場所
黒部ダムレポートはいかがでしたか?交通も整備されていますし、遊歩道の観光ルートも見どころがわかりやすい設計になっています。近くには温泉地もあり、黒部ダムを見て近くの温泉地に宿泊する、なんてプランもいいですね。 今では当たり前のように使っている電力も、多くの人たちによる多大な苦労と努力で成り立っていると思うと、電気のありがたみを感じる事ができるのではないでしょうか。 ぜひ、一度は訪れていただきたいおすすめの場所です。ぜひ、動画でも確認してください✨
プロフィール
伊藤菜々(いとう・なな)
電力系ユーチューバー(電気予報士)
上智大学経済学部経営学科卒業。電力全面自由化に伴い新電力の立上げに関わった後2019 年から独立し、現在の有限会社スタジオガルを開業。電力事業の立ち上げ・運営支援、企業PRや商品広報、ZEH住宅やマイクログリッド等の地域脱炭素活動を行う。実績として大手新電力 での研修や営業企画、国立大学での講義、展示会やセミナー 等での講師を行う。 電気業界をたのしく!わかりやすく!解説した Youtube チャンネル「電気予報士なな子のおでんき予報」を 2020 年 4 月開設し情報発信中。 第二種電気工事士試験を独学で合格。現在電験三種の一発合格に向けて勉強中。