現場レポート
電気予報士・伊藤菜々さんがレポート!「東京電力パワーグリッドさんの地下変電所と洞道を見学してきたよ」
私たちが普段から使っている電気は、発電所で作られ、変電所や送配電線を通って、形を変えながら私たちが使える電気として届けられています。今回は伊藤菜々さんが都心における電気の安定供給を探るため、実際に地下変電所やケーブルの通り道である洞道を取材してきました。
電気が送られてくる仕組み
電気は発電所で作られ、電気を使う会社やオフィスなどの需要家まで形を変えて、送配電線を通して運ばれてきます。発電所で発電された電気は、効率よく遠方へ届けるために、電圧を高くして送り出されているのです。私たちの家庭では100Vや200V、企業でも6600Vと送り出される電圧よりも低いため、電気を送る過程で電圧を下げていきます。そういった電気の電圧を変えたり、他にも効率を良くする工夫をしたりしているのが変電所です。そして、電気を送るための設備の建設や管理、保安は一般送配電会社が行っています。 郊外へ行くと送電線をつなぐ鉄塔や変電所、街中にも電柱を見かけますが、都心ではあまり見かけませんよね。なぜなら、地下に設置されているためです。東京などの都心では土地がないため、地下に送配電線を通す洞道や変電所を建設しています。今回は、その施設を見学してきました!
地下変電所
東京エリアの一般送配電会社である東京電力パワーグリッド。その銀座支店では、東京都の中央区、千代田区、港区を管轄しています。都内でも特に建物が多く空いている土地が少ないエリアであり、約9割の施設が地下に埋まっています。 今回、見学で訪れたのは永代橋変電所。永代橋変電所は中間変電所と呼ばれ、発電所から送られてきた電圧の高い電力を変電し、より下層の変電所に送ったり、高圧で受電したりしている需要家へ電気を送り届けています。地下にこんな大きな施設があるとは…! 永代橋変電所は超高圧変電所と中間変電所の役割を果たしています。超高圧変電所は、発電所やより上位の変電所から送られてきた電力を降圧し、さらに中間変電所や高圧のお客様へ電気を送り届けます。また、中間変電所は、高圧のお客様へ電力を送り届ける変電所です。 地下には電気を変圧する変圧器や、電気を送ったり止めたりするスイッチの開閉器、力率改善をして効率を上げるための分路リアクトルがあります。分路リアクトルは最近交換をしたもので、搬入する際は道路を掘り起こし、重機を使って搬入をします。古いものと交換する場合、搬出の時間もかかるため、交換には1年ほどの長い時間がかかってしまうのです。
ケーブルの通り道「洞道」
洞道とは電気を送るケーブルを通しているトンネルのこと。今回見学した永代橋変電所から入り込んだ洞道は東京電力専用でしたが、中にはガスや下水道、通信線と共同のものもあるのだとか。 地上面から足元までの深さ17.5mの洞道。この規模にしては浅いそうですが、階段を下りて地下の空間を見たときは、こんなものが東京の地下にあるのか!とまたしても感激。中には無数のケーブルが張り巡らされ、変電所内で使う電気や他の変電所へ送られる回線がありました。27万5000Vが3回線、6万Vが51回線通せるつくりになっているそう。送電線にはケーブルが使われており、1メートルで10kgにもなるそうです。ケーブル工場で作られたものをドラムに巻いて運び込み、立坑を掘り、中に入れていき地下で接続を行うので、大変な作業であることがわかります。
安全対策として、ケーブルの接続部には防火性のアラミドシートというものが覆いかぶさっています。絶縁を確保するためにケーブルに油が使われていますが、もしものトラブルの際にも他のケーブルに飛び火しないように考えられているのです。これだけ電圧の高い電力をたくさん扱う場所なので、安全対策も万全にされています。
東京電力パワーグリッドや関係会社さんのお仕事
制御室では、24時間365日体制でリアルタイムで電気の供給を監視して、事故や異常があった際は、いち早く停電復旧ができるように対応をしています。停電が発生した時、例えば電線にあたったものが再び飛んで行くなど、異常自体が自然に解消されることも少なくありません。このような場合は作業員が出動しなくてもいいケースもあり、自動で数分後に停電復旧ができるための仕組みもあります。また実際に事故が起きた際、より正確に場所を把握する仕組みもありました。 事故や断線などの現場に駆け付けなければならない場合は、制御室にいるスタッフの方と現場作業員の方が連携し、いち早く停電復旧を行います。東京電力の社員さんが「いち早く電力をお届けすることが私たちの使命です」と言う通り、何一つ不便なく電気を使えている裏側にはこのような努力があったのだと痛感しました。
安定供給を守るためにこれから大事なこと
私たちの生活が便利になっている理由の一つに、インバーターの活用があります。インバータは、エアコンや冷蔵庫など、あらゆるものに使われており、電力の制御や変換を行うものです。しかし、非常に便利な一方で、高調波というものを発します。私たちの使用する電力は、東は50Hz、西は60Hzと決まっていますが、高調波は150Hz、200Hzまたはそれ以上と周波数が高く、電力の安定供給を不安定にさせてしまうのです。そこで重要なのが高調波対策です。電気の安定供給を守るには、発電を確保したり、送配電線や受電設備のメンテナンスをしたりするだけでなく、電力需給バランス(発電と需要のバランス)、周波数の調整、高調波対策など多岐にわたることがわかりました。 2050年のカーボンニュートラルに向けて再生可能エネルギーの導入も増えていくことで、今後は電気を利用するわたしたちにも工夫が必要となります。たとえば、電力を使用する時間帯をタイムシフトすること。エリア全体で電力の足りない時間帯に使用するのを控え余っている時間に使用すること。時間帯に使用するのを控え余っている時間に使用すること。また、高圧を使用する場合は、高調波を出さないように直列リアクトル付き進相コンデンサを設置するといった対策が必要になるそうです。 少しの工夫で電気が安定して供給できるので、みなさんもご協力いただけると嬉しいです。ぜひ、動画もみてくださいね♪
プロフィール
伊藤菜々(いとう・なな)
電力系ユーチューバー(電気予報士)
上智大学経済学部経営学科卒業。電力全面自由化に伴い新電力の立上げに関わった後2019 年から独立し、現在の有限会社スタジオガルを開業。電力事業の立ち上げ・運営支援、企業PRや商品広報、ZEH住宅やマイクログリッド等の地域脱炭素活動を行う。実績として大手新電力 での研修や営業企画、国立大学での講義、展示会やセミナー 等での講師を行う。 電気業界をたのしく!わかりやすく!解説した Youtube チャンネル「電気予報士なな子のおでんき予報」を 2020 年 4 月開設し情報発信中。 第二種電気工事士試験を独学で合格。現在電験三種の一発合格に向けて勉強中。