電気予報士・伊藤菜々さんレポート!「ラインマンって何?お仕事現場に一日密着!」

更新日:2023.07.29投稿日:2023.07.29

ラインマンとは送電線の工事を行う人達のことで、鉄塔の上に登って作業をしたり、電線の張り替え工事をしたりします。上空50メートルを超える場所で作業をすることもありますし、屋外の作業なので暑い日も寒い日も雨が降っても現場で作業をこなさなくてはなりません。今回は、電力の安定供給を守るラインマンの一日に密着しました。

ラインマンのお仕事

ラインマンとは、送電線の工事を行う人のことを言います。ラインマンの“ライン”は送電線のライン。そのラインの上で作業を行うのでラインマンなのです。日本のラインマンは7,000人ほどと、人材が足りていません。 ラインマンには作業を行う工事屋さんと、工事の進捗管理やチェックを行う施工管理という2つの職種があります。工事屋さんは鉄塔に昇る作業が多く、送電線の上で重いものを持って移動したり、重い部品を取り付けたりします。工業高校で電気を学んだ方だけでなく、最近では普通科を卒業した方でも気持ちがあれば就職ができるそうです。後者の施工管理の方は、お客様とのやり取りや見積もり作成、スケジュール管理や、工事屋さんが施工してくれた現場の撮影と記録などを行います。写真撮影や工事状況のチェックで鉄塔に昇ることもありますが、地上や事務所でのお仕事も多くあります。 どちらにしても、電力の安定供給を守る仕事であり、やりがいを感じている方も多く、私たちの生活にはかけがえのない存在なのです。

この日の作業は送電線の張り替え工事

ラインマンの仕事は、鉄塔の新設から建て替え工事、電線の張替え工事など種類はさまざまです。この日は50年くらい経った電線の張替え工事でした。送電線には太い電線で鋼芯アルミより線というものが使われており、雨風にさらされて長い時間が経つと劣化してしまうので、張替えを行わなくてはなりません。

まず、ラインマンが鉄塔に昇って送電線へ乗り出し、現在の古い電線に取り付けられている備品や電気を絶縁するがいしを外します。その時に細いロープを送電線の両端に取り付け、ここに新しい電線を繋いで、古い電線に取り付けたロープを引っ張って巻き取り、張替えます。張替え区間の反対側に立っている鉄塔の下から、ドラム形の巻き取り機で巻き取って行きます。トランシーバーでやり取りをしながら、寄れたりしないように重い送電線を慎重に巻き取って行く繊細な作業です。ラインマンはみなさん、自分の役割や次の作業を把握し、テキパキと作業していました。 鉄塔にも軽々と昇ってしまうラインマンが、地上で繊細な作業もこなしているところを見ると、送電工事の内容も幅が広く職人技だと感じました。

ラインマンにインタビューしてみた!

ラインマンの2名の方になったきかっけ、お仕事のいいところと大変なところ、プライベートのことについてインタビューをしてみました。一人目は、ラインマン10年目の武田さん。二人目はラインマン歴23年の佐藤さんです。 鉄塔に昇るのは怖くないんですか? 武田さん「はじめは怖かったけれども今は慣れ怖いとは感じない。」 佐藤さん「初めての現場が東京だったのだが東京タワーが見えてキレイな景色でラッキーだと思った」 お仕事の良いところや大変なことは? 武田さん・佐藤さん「やりがいを感じられる仕事ですよ。鉄塔は全国にあるので出張も多くいろんなところへ行けるのも楽しみのひとつ。大変なことは、暑さ寒さや雨など、天候に関わらず屋外で作業をするので、工期が詰まっているときは大変なときもありますね」

ラインマンの宿舎「ラインマンハウス」

今回取材させていただいたETSホールディングスさんには、ラインマンの宿舎であるラインマンハウスというものがあります。家賃は無料で、福利厚生として準備されています。 1階には事務所兼集まれるスペースや、大きなキッチンと食堂、お風呂、選択場所が、2階には個室があり、洋室タイプと和室タイプと選べるようになっています。ラインマンはお仕事が終わると、洗濯をしたりお風呂に入ったり、食事は各個人で作って食べたりしたり、大きな食堂で誰かと食事することもできるそうです。 今回は何名かにお部屋を覗かせていただきました。趣味のギターや洋服が並べられたお部屋、お酒が好きでみんなでよく飲み会をしているという方もいました。ラインマンの仕事は、感電や墜落など、危険と隣り合わせです。危険をなくすために、チームで協力しながら、互いを信頼しあい、作業をしています。そのため、結束や信頼関係が自然と強くなるのだとか。

今回取材した中には、東日本大震災で自分の故郷が津波の被害を受け、親しい方を失ってしまったという方がいました。当時辛かったけど、ラインマン仲間との日々があったから強くなれた、救われたと、胸が熱くなるコメントも。 仕事に誇りを持ち、命と隣り合わせでありながら、社会のためになるお仕事をしているからこそ得られる充実感をかみしめていらっしゃる方ばかり。この記事を読んで、ラインマンに感謝をしながら、たくさんの方に電気の安定供給を守ってくれている人がいることを知っていただけると幸いです。

プロフィール

伊藤菜々(いとう・なな)


上智大学経済学部経営学科卒業。電力全面自由化に伴い新電力の立上げに関わった後2019 年から独立し、現在の有限会社スタジオガルを開業。

電力事業の立ち上げ・運営支援、企業PRや商品広報、ZEH住宅やマイクログリッド等の地域脱炭素活動を行う。実績として、電力会社や企業での講演、学校での講義、展示会やイベントの出演を行う。 電気業界をたのしく!わかりやすく!解説した Youtube チャンネル「電気予報士なな子のおでんき予報」を 2020 年 4 月開設し情報発信中。 第二種電気工事士、電験三種取得。現在電験二種の合格に向けて勉強中。

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