電気の資格のアレコレ
電気工事士の問題を解いてみようシリーズ 学科編①
電気工事士の学科試験では実際にどんな問題が出て、なにを覚えればいいのでしょうか?
学科編①はコンセントを表す図記号について解説します。
コンセントの縦二本の穴の長さ、実は違うってホント?
普段何気なく使用しているコンセント。実は縦二本の穴には秘密があります。 一般的なコンセント(100V15A)をよく見てみると、実は差し込み口の左側が少し長く(9mm)右側が短く(7mm)なっています。たった2mmの差ですが、この二つの穴には役割があり、電気が送られる(触れると感電する)側と、戻る(触れても感電しない)側に分かれています。
写真の左側の長い差し込み口は、「使用後の電気が返るための線」で、最終的には電力会社により地面に接続されています。この接続のことを「接地(アース)」といいます。通常電化製品などに接続する場合、電気は電化製品を通り「返るための線」にも同じ量の電気が流れていますが、接地されているので感電しません。ちなみに、この穴を接地側端子といいます。一方、右側の短い差し込み口は「電力会社から送られてくるための線」で、100Vの電気が通っているため、触ると感電(ビリビリ)します。本来は、電化製品などを通して「返るための線」に電気がいくはずが、人に流れてしまうためです。この穴を非接地側端子といいます。(危険ですので絶対に触って確認してはいけません)。 この二つの接続は、「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」で定められており、危険か安全かを見分けられるように、穴の長さが異なっているのです。 電気の配線をする際も「電力会社から送られてくるための線」と「使用後の電気が返るための線 」は明確になるよう違う色の線で接続します。通常、非接地側をホット側といい黒線、接地側をコールド側といい白線を使用します。また、コンセント側も接続を間違えないように白線を接続する端子側の近くには白(White)の略で「W」の表示があります。
Q1.なぜ電線の片側を地面に接続するの?
電化製品の故障を防ぐためです。私たちが使用している電気は電力会社から高圧の6600Vで送られてきているものを、低圧の100/200Vに変圧器で降圧しています。もし、変圧器に異常が生じて使用する低圧側に高圧がそのまま漏れてくると、使用している電気製品が異常電圧により故障してしまいます。そのため、防止策として異常電圧を地面に放出させ、故障や火災、感電にならないようにしています。
Q2.なぜ接地側(白線)と非接地側(黒線)が解るようになっているの?
安全な端子と危険な端子を解るようにして、事故を防ぐことがおもな目的です。ちなみに40~50年前の家電製品、特に真空管式の白黒テレビが普及した頃のテレビの中身は、シャーシという金属の台に部品を取りつけていました。シャーシは金属でできており、テレビの接地側(電源の接地とは異なる)として電源からの線を直接接続していたため、コンセントへの差込み方によっては、シャーシに触れて感電することもありました(一般の人が触るところは絶縁されているので感電はしません)。そのため、防止するために接地側と非接地側が解るようになっていたのです。 最近のAV機器でもコンセントに機器の電源コードを接続するときコードの接地側(コードに線や文字が記載されている側)をコンセントの接地側に接続すると雑音や解像度が良くなるという人もいます。 また、電気が来ているかを確認する(検電という)とき、接地側端子では検電では音や光の反応はありませんが、非接地側端子では光や音で電気が来ていることが確認できます。
実はたくさんあるコンセントの種類
コンセントというと家にある縦二本のコンセントが2~3個並んでいるもの、という方が大半だと思いますが、コンセントはまだまだ種類があります。試験問題の配線図(単線図)には、図記号で記載されますのでしっかり確認しましょう。 まず、基本的なコンセント(縦二本が1個)の図記号ですが、丸の中に2本の線があります。これはプラグの形を模したものです。また、壁付(壁に取付ける)は壁の部分が黒色になります。図記号にはどのくらいの電圧なのかなどが傍記されますが、基本的な125V(100V)と15Aは記載されません。
①電圧での違いによる刃受け(差し込み口の形)と図記号(15Aの例)
受け取る電圧の違いによって、コンセントは異なります。電圧には単相と三相があります。
②電流での違いによる刃受け(差し込み口の形)と図記号
電流は15Aと20Aがあり、間違えて接続することのないよう、20Aのプラグは接地側が曲がっており、15Aのコンセントには差し込めないようになっています。
③機器を接地(アースを取り付ける)するタイプのコンセント
機器によっては人が触れる部分に電気が流れて感電する恐れがあるものがあります。これを防ぐため、漏れた電気を地面に逃がす接地(アース)を差し込みプラグの接地とは別で繋ぐタイプがあり、それに対応したコンセントもあります。洗濯機や温水洗浄便座などがこれにあたります。
写真は、125V15A1口接地極付接地端子付きコンセントで、図記号の傍記は、接地極を「E」、接地端子を「ET」と表すため、これを続けて記載します。ちなみに1口というのはコンセントが一つ、という意味です。
④差込プラグが抜けない構造になっているコンセント
⑤設置場所によって使い分ける特別なコンセント
ここで紹介したものは一部で、まだまだ種類があります。普段何気なく使用しているコンセントですが、用途に合わせて、また事故防止のために、様々な種類があることをお分かりいただけたのではないでしょうか。
電気工事士試験ではどのように出題される?
コンセントの種類について少し理解できたところで実際の電気工事士の試験問題を解いてみましょう。
いかがでしょうか。⑮はコンセントの図記号にETと書いてありますね。 まず、コンセントの図記号は縦二本に壁付の黒塗りのコンセントです。そして、コンセントの数ですが、1個の場合は傍記なし、2個の場合は2と記載します。今回は傍記がないのでコンセントは1個ということがわかります。そしてETは接地端子付のことでした。接地極も付いていればETのほかにEがつくはずですから、接地極は付いていないことがわかります。よって、コンセントは1個、接地極はなし、接地端子は付いているコンセント、「ハ」が正解となります。
学習のポイント
コンセントを学習する場合、写真と図記号が解るように勉強しましょう。 ・100V(125V)と200V(250V)の違い ・15Aと20Aの違い ・傍記する記号 特に傍記する記号が解るようになると、ほとんどの図記号を読み解けるようになります。身の回りにあるコンセントを見て名称と図記号が出てくるようになるといいですね。電気工事試験では毎回1問は出題されますので、しっかり勉強しましょう。
プロフィール
TAC電気工事士講座 三原 政次(みはら まさじ)講師
1950年鹿児島県生まれ。東芝テクノネットワーク(株)を経て「オフィスみはら」として電気工事や家電製品についての講師業を開設。現在は大学非常勤講師、企業講師としても活躍中。