電気の資格のアレコレ
電気工事士の問題を解いてみようシリーズ 学科編③
みなさんは自分の家の分電盤を見たことがありますか? どこのご家庭にもあるブレーカーとその仕組みについて解説し、出題される問題を一緒に解いていきましょう!
目次
お家の分電盤を見たことはありますか?命を守るブレーカー!
分電盤は配電線を通って家などに入ってくる電気を配分する場所であり、家の中の電気を見張っている 場所でもあります。家に入ってくる電気は、室外にある電力量計(またはスマートメーター)で使用電力量が測定された後、室内に入る仕組みです。分電盤にはアンペアブレーカー(漏電遮断器)が設置されており、電力会社との契約容量で決められた電流値以上の電気が入ってきた時に自動的に電気を止める役割を担っています。これを別名、電流制限器またはリミッターともいい、一般的に「ブレーカーが落ちた」というのは、電気の使いすぎや漏電などでこのアンペアブレーカーが電気を遮断した状態のことです。 また最近は、電力量計であるスマートメーターがブレーカーの役割も担うようになってきています。 スマートメーターは30分ごとに電気の使用量を計測し、契約容量以上の電気を使用した場合は、メーター内のブレーカーが自動で「切」が作動し、一時的に停電させます。さらに通信機能を保有しているため、遠隔で数値の取得や異常を検知することができるのです。これらは感電や火災の原因を引き起こす、漏電等を防止するために取り付けられ、命を守る役割をしています。 分電盤に入った電気は、ブレーカー(漏電遮断器)で監視した後、電気を複数に分け(分岐する)それぞれの回路に送られます。それぞれの回路には先ほどのブレーカーとは別に、配線用遮断器と呼ばれるものが設置されており、接続された配線および機器を安全に使用するために、ここでも電流を制限しています。一般的には20Aまたは30Aの配線用遮断器が使用されています。
家庭用の漏電遮断器と配線遮断器の違い、電動機用配線遮断器との違い
「ブレーカー(漏電遮断器)」は、電気の開閉器つまみ(入/切の表示)とテスト釦(ボタン)で確認することができます。中の構造は、外から確認できませんが、漏電を検出する機器(零相変流器)が内蔵されており、漏電などが発生して容量以上の電気が流れると、その電気を遮断するための回路に流れこみ、開閉器つまみ(入/切の表示)を「切」にする電磁石に通電し、電気が流れなくなります。 ブレーカー(漏電遮断器)には、漏電のみを検出するタイプと、電線の断線や接触不良なども検出する「欠相保護付き」、一般的にブレーカー(漏電遮断器)が電気を一方通行流すところ、両方向へ電気を流すことができる「逆接続可能形」、過電流(落雷等で大量に流れる電流)や短絡電流(電線同士の接触で大量に流れる電流)で動作する「過負荷保護兼用形」及び「電動機保護兼用形」などがあります。
配線用遮断器」とは、回路に規定以上の電流が流れると作動し、開閉器つまみが「切」になって電流が流れなくなる開閉器です。私たちの家で使用している電気は、単相(一般家庭で利用される電気交流)100Vおよび200Vで、使用する配線用遮断器は2種類あります。100V専用の2極1素子(2P1Eという)と、100Vと200Vに使用できる2極2素子(2P2Eという)です。 2極1素子(2P1E)は接続できる配線は2本(これを2極といいます)、配線を接続する極(端子)にNとLの表示があります。N極は開閉器のみ、L極には電流を検出する素子が設置され、規定以上の電流が流れると開閉器つまみが「切」になります。 2極2素子(2P2E)は接続できる線は2本、各極それぞれ電流検出する素子があり2素子となり、接続する線の指定はありません。
「配線用遮断器電動機保護機能付き」(モーターブレーカー)は、一般の配線用遮断器とは動作特性が異なり、始動時、通常運転時に流れる電流の5〜7倍の大きな電流が数秒間流れます。電動機保護機能付きは一般の配線用遮断器と違い、電動機の始動時に発生する大きな電流である「始動電流」で動作しない(電気が切れてしまうことのない)よう、ブレーカーの遮断特性を電動機の電流特性に合わせてあります。配線用遮断器電動機保護機能付きは、専用と配線用遮断器兼用形があります。
第二種電気工事士の試験に出題される遮断器の問題は?
問題の解説
学習のポイント
遮断器に関する問題は1~2問出題されますので、まずは遮断器の問題は「漏電遮断器」と「配線用遮断器」の図記号を覚えてください。次に、100V専用の2極1素子(2P1E)と100/200Vに使用される2極2素子(2P2E)を図面から使い分けられるようにしましょう。 今回の解説に使用したのは、「令和3年度上期午後 第二種電気工事士筆記試験 問41」と「令和5年度上期午前 第二種電気工事士筆記試験 問44」の写真です。写真の下方に記載されている内容を正しく理解することが、確実に点をとる近道です。
プロフィール
TAC電気工事士講座 三原 政次(みはら まさじ)講師
1950年鹿児島県生まれ。東芝テクノネットワーク(株)を経て「オフィスみはら」として電気工事や家電製品についての講師業を開設。現在は大学非常勤講師、企業講師としても活躍中。