電気業界の仕事とは?
【電気工事士】電工ニッパーの基礎知識・おすすめ紹介
電工ニッパーは現場の電工職人には欠かせない工具の一つです。 新人電工さんからベテランさんまで役立つ内容になっているので、ぜひ最後までお付き頂けると幸いです。
目次
電工ニッパーとは【基礎知識】
電工ニッパーとは銅線や針金などを容易に切断出来るニッパーです。 電気工事士には欠かせない工具で腰道具には必ずと言っていいほど装備されています。
電工ニッパーを選ぶ際のポイント
- 切断能力
- 刃の形状
- サイズ
切断能力
ニッパーの種類によって切断できる能力に違いがあります。 電気工事士として扱うものは最低でも(VA・VVF線):Φ2.0mm×3芯の切断が出来るものを選びましょう。(大体のニッパーは満たしてあります)
ただニッパーによっては 切断能力が高いが耐久力が少ない 切断能力はそこそこだが耐久力が高い、といった特徴があるので注意です。
先端形状
刃の表面形状は大きく分けて種類あり下記のとおりです。
- フラット刃→切断面が真っ直ぐ
- ラウンド刃→切りやすい(バランス形)
- 強力刃→切断能力特化
フラット刃
切断面がフラット(真っ直ぐ)になる形状です。 電気工事においてケーブルをフラットに切断できるメリットは大きいです。 特に器具などの端子台への心線差し込みは、 真っ直ぐの切断面だと入りやすく作業効率が上がります。
ラウンド刃
切りやすさを重視したモノがラウンド刃です。 フラット刃よりも簡単にケーブルを切断することができます。 また切断面はフラット刃のように真っ直ぐでは無いですが刃の背中をピッタリ当てることで切り残しなく(ツライチ)切断することが可能です。電気工事ではインシュロック(結束バンド)のヒゲ部分を切ることが多くツライチで切断することで仕上がりがキレイになる、というメリットがあります。
強力刃
強力刃は3種類の形状の中で一番切断能力に優れています。 その理由は太い刃で両側から喰い込ませるように切断する構造になっているからです。
そのかわり刃表面形状を見てわかるように刃の側面をピッタリ当てて切っても 少し切断面が出てしまいます。 インシュロックをツライチで切ることが出来ないためこれを嫌がる人もいます。 切断能力を取るか、仕上がりを取るか好みが分かれる所でもあります。
サイズ
電工ニッパーのサイズ選びには下記のような特徴があります。
- サイズが大きい→テコが効き切りやすくなる
- サイズが小さい→小回りが効き扱いやすくなる
ただ一様にサイズが大きい程良い、小さい程良いと言った基準ではなく 自分の手の大きさに合ったサイズを選ぶことが大切です。 例を挙げると、小さいサイズは切断にチカラが必要ですが ケイバ製のような切断能力が高いニッパーを使えば容易にケーブルを切ることができます。 切断能力×先端形状×サイズの組み合わせ次第で弱点を補正していくことが可能です。
電工ニッパーのメーカー紹介
電工ニッパーの主なメーカーは下記のとおりです。
電工ニッパーのメーカーはどこを選べばいいの? という疑問が出るかとは思いますが、結論「好みでOK」です。
それはメーカーごとの多少の強みはあるものの 各会社それぞれ色んなタイプのニッパーを取り揃えているからです。 先述した電工ニッパーの特徴、切断能力・刃の形状・サイズを見ながら 自分に合ったモノを探していきましょう。
電工ニッパーのおすすめ紹介
エレ子のような悩みの方もいるかと思うので 私がオススメする電工ニッパーを紹介していきます。
メリー(室本鉄工)
室本鉄工 メリー 206S-200 の特徴は下記の通り
・切断能力(mm)鉄線:φ2.6 銅線:φ3.5 VA線
・ラウンド刃
・サイズ:全長200mm
大きさは各種ありますが私のオススメは一番大きい「200mm」タイプです。 耐久性に優れていて、無理な手荒な使い方をしなければ長く使うことができます。 またグリップが大きいので力が入れやすく扱いやすいのが特徴です。 ただ初心者の方はケーブルを切る時に力がいるので、慣れるまでは少し大変かもしれません。
ケイバ(マルト長谷川工作所)
マルト長谷川工作所 ケイバ 電工用薄刃ニッパー NH-218 の特徴は下記の通り
・切断能力:軟鉄線/直径2.5m、軟銅線/直径3.5mm、V.V.F.線(3芯)/直径2.6mm
・ラウンド刃
・全長203mm
NH-218は切断能力に優れた電工ニッパーです。 VVFなら軽い力で切断することができ、最大ではCV8sqまで切ることができます。 電気工事ではVVFケーブル以外にもさらに太いCVケーブルを扱うことが多く 多くのニッパーでは切断しにくく、専用のケーブルカッターを使うことになります。 ですが、別途そういった工具を用意せずにニッパーで 容易に切断できるのは、作業の効率UPにつながります。 ただ薄刃形状は耐久性が低いのが弱点で、切断能力以上の硬いものを切断しようとすると(番線など)簡単に刃こぼれしてしまいます。
電工ニッパーのメンテナンス・研ぎ方
電工ニッパーのメンテナンス
電工ニッパーのメンテンスに関しては基本的には刃の可動部分に 防錆&洗浄剤に付ける程度で十分です。 メジャーな物で下記の呉工業の「KURE 5-56」がオススメです。
工具全般に言えることなのですが、雨などで工具が濡れてしまった場合は 必ずその日の内に防錆スプレーをかけておきましょう。 濡れたままそのまま放置しておくと、翌日には錆だらけになってしまいます。
電工ニッパーの研ぎ方
電工ニッパーの刃は研いでおくべき?といった疑問がありますが 結論から言って「研いで使うなら、買い換えるべき」だと思います。
理由はひとつ、手間がかかりすぎることです。 電工ニッパーは使用頻度が高い消耗品です。 よほど思い入れのあるニッパー、という以外は刃こぼれしたらすぐに 新しいモノに買い替えて、作業の質を落とさないようにするほうが賢明です。
こういった方には参考リンクを下記にて載せておきます。(外部サイトへ移動します)
研ぐことのコストや質を考えるなら、購入したほうが早いしそれくらいの金額は しっかりと工具にかけてあげるべきだと思います。
電工ニッパーを使った心線の輪作り
電気工事士の作業で「心線の輪作り」という技術があります。 絶縁電線の被覆を剥ぎ取り、中の心線を輪っかにして端子台にネジ止めをする方法です。
通常はペンチやVVFストリッパーの先端プライヤーで輪作りを行いますが、実はニッパーを使って輪作りをすることも出来ます。 覚えておくと役に立つので是非習得してみて下さい。
①絶縁電線を剥く
絶縁電線を剥きます。目安としては50mm以上がオススメ。あまり短く剥くと曲げられなくなるので注意です。
②首を作る
輪っかの「首」の部分を作ります。ニッパーの直角部分押し当てて曲げるとカンタンです。 この首がない輪っかだとネジ止めの際に絶縁被覆をネジに噛ましてしまい施工不良になってしまいます。約2mm程と表記していますが短か過ぎても長すぎても駄目なので慎重に。
③折り返すように曲げる
首部分から約30mm程離したところでニッパーを”軽く”挟み折り返すように曲げます。 少しでも握るチカラを加えると心線に傷が付くので注意。 又、この離す距離によって輪っかの大きさを調整できるので、色んなサイズの輪作りを練習しておくことをオススメします。
④次の曲げ位置を決める
二回目の曲げ位置を決めます。目安としては一回目の曲げで離した距離と同じ幅で曲げると上手くいきます。とはいえ、ここは感覚の部分が多いので一番難しいポイントです。
⑤輪の形に曲げる
二回目の曲げ位置が決まったら、輪の形に一気に曲げきります。この時のポイントはグルっと円の形になるまで曲げきる事です。ここの角度が甘いと歪んだ輪っかになってしまいます。 うまく出来ない人は、この2回目の曲げを数回に分けて曲げる方法もあります。 その際は心線を挟む回数が多くなる為、傷付けには特に注意して下さい。
⑥完成
輪っかになって心線が重なっている部分を切断して完成です。
ニッパー輪作りのポイントは下記の通り
・ペンチより工程が少なく早く作れる
・心線が傷付きやすい為、難易度高い
・大きいサイズの輪を作りやすい
一点注意なのが、第二種電気工事士の技能試験でこの方法は学びません。 おそらく非推奨な方法だと思うので、資格試験を受ける際はペンチやVVFストリッパー等を使って輪作りをして下さい。 あくまで実践現場でのテクニックで、作るスピードを上げたい、色んなサイズの輪っかを使い分けて作りたい、といった方にオススメの方法です。
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この記事は電気工事の専門サイト「でんブロ」より転載したものです。