制御工学の基礎中の基礎!シーケンス制御とフィードバック制御を理解しよう

更新日:2024.08.17投稿日:2024.08.17

制御工学において、もっとも基本的な制御方法として知られるシーケンス制御とフィードバック制御。今回はこの2つの制御方法における特徴や違い、深く理解するための用語を解説します。

シーケンス制御とは逐次定められた手順で動作する制御のこと

シーケンス制御とは定められた順序に従い逐次動作を実行していく制御のことです。もっとも身近な例が洗濯機の制御で、「水と洗剤の投入、洗浄、すすぎ、乾燥」と、決められた手順を順次繰り返して工程が進みます。他にもエレベーターが指定した階に止まる仕組みや自動扉が人を検知して開閉する仕組みもシーケンス制御の実例です。

シーケンス制御では制御対象の状態を測定する必要がないため、フィードバック制御に比べると制御システムの設計が容易で、制御内容もわかりやすいのが特徴です。一方、途中で制御内容の修正ができないため外乱に弱く、制御が完了するまでの速度や精度が劣ります。

フィードバック制御は現在値を目標値に近づける制御のこと

フィードバック制御とは、与えられた目標値と制御対象となるパラメータを比較し、制御量が目標値に合致するよう動作する制御のことです。ここでいう制御対象のパラメータは、圧力や温度、液面などシステムによって様々な数値が該当します。代表的な例として、エアコンの温度制御や発電機の出力制御、タンクの液面管理などがあります。

フィードバック制御は制御内容や設計が複雑でセンサも多く必要になるものの、外乱に強く高精度で、目標への到達速度もシーケンス制御より早いのが特徴です。ただし、制御パラメータの選定や制御量の設計を誤ると、後述するハンチングやオーバーシュートといった不具合を招く恐れもあります。

それぞれの制御に向き/不向きがある

一見すると制御対象の状態を測定して目標に近づけるフィードバック制御の方が優れているように感じるかもしれませんが、実際にはそれぞれの制御に得意・不得意があります。たとえば、洗濯機をフィードバック制御する場合、目的が汚れを落とすことのため、目標とする汚れの量を指定し、現在の衣類の汚れが目標に達するまでモニタリングしながら洗浄しなくてはなりません。ところが一つひとつの衣類の汚れを定量評価するのは現実的ではありませんし、なおかつ、複数の衣類を洗濯しながら連続的に汚れを測定するのは不可能なため、洗濯機はフィードバック制御には向いていないと言えます。

反対にエアコンをシーケンス制御する例を考えてみると、フィードバック制御の方が適していることが分かります。というのも、シーケンス制御では指定された動作を繰り返すことしかできないため、目標とする温度や現在の室温に関係なく、一定の強さで冷やし続けるか暖め続けることしかできません。人間が自ら冷暖房を切り替えればいつかは目標の室温に辿り着けるものの、人間が介入しなければならない時点でシーケンス制御が向かないことは一目瞭然でしょう。

フィードバック制御に関する用語について

シーケンス制御と比べて複雑なフィードバック制御では、覚えておくべき用語がいくつかあります。

SV値・PV値・MV値

フィードバック制御ではSV値、PV値、MV値という3つの制御パラメータが重要になります。具体的に、Set Valueの略であるSV値は制御における目標値を、Process Valueを略したPV値は制御対象の現在量を、Manipulated Valueの略であるMV値は制御対象に働きかける制御量をそれぞれ表します。

エアコンによる温度制御を例に取ると、目標とする室温がSV値で現在の室温がPV値、室温を制御するためのファンの回転数やヒーター出力などの制御量がMV値となります。ちなみにシーケンス制御ではPV値を測定してSV値と比較する作業がなく、単に決められた手順でMV値を変動させて制御を行います。

オーバーシュートとハンチング

フィードバック制御では現在値(PV値)と目標値(SV値)の差に対して制御量(MV値)が不適切だと、オーバーシュートやハンチングといった不具合が起こり得ます。まずSV値とPVの差に対してMV値が高すぎると起きるのがオーバーシュート現象です。本来であれば、PV値がSV値に近づいていくところが、制御動作が強すぎるせいでどんどんと遠ざかっていってしまいます。反対にMV値が小さすぎると起きるのがハンチングで、PV値がSV値を上回ったり下回ったりを繰り返すことで、目標に到達できなかったり目標に到達するまで時間がかかります。

プロフィール

佐藤竜騎
2017年4月に某大手石油化学工場へ就職し、現在まで電気・計装設備の保全・更新計画の検討/立案から工事の実行まで一貫した業務に従事。携わった機器/システムは、分散制御システム(DCS)、流量/液面/圧力/温度の検出/制御機器類、ガス漏洩検知システム、プロセスガスクロマトグラフィーやpH計を始めとする各種オンライン分析計など多岐にわたる。現在は副業として電気/電子分野の専門知識に特化したウェブライター活動にも精を出している

保有資格:第3種電気主任技術者、第二種電気工事士、認定電気工事従事者、高圧ガス製造保安責任者(甲種機械)、工事担任者(AI/DD総合種)、2級ボイラー技士、危険物取扱者乙種4類など

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