「イノベーションが起きている今、電気業界が一番面白い!」電気予報士YouTuber伊藤菜々さんインタビュー

更新日:2024.10.07投稿日:2024.10.09

伊藤菜々さん取材メイン画像

電気業界の最新情報をYouTubeで発信し続ける「電気予報士 なな子」こと伊藤菜々さん。コンサルタントとしての顔も持つ伊藤さんは「電気業界は変革期を迎え、新しくなっている」と語ります。業界はどう変わってきているのでしょうか? 電気業界で働く魅力と電気業界のこれからについてお話を伺いました。

文系出身の伊藤さんが電気業界で働くことを決めたワケ

電気業界の情報発信を続けている伊藤菜々さん
電気業界の情報発信を続けている伊藤菜々さん

――伊藤さんは、YouTubeチャンネル「電気予報士 なな子のおでんき予報」で日々、電気に関するあらゆる情報発信をされていますね。

「YouTubeでは “電気予報士 なな子” として活動していますが、本来、電気予報士という職業自体は存在しません。ただ、キャッチーな肩書きがあった方が興味を持ってもらえると思ってそういう肩書きを作りました。私の本業はコンサルタントですが、それとは別に、YouTube配信やSNS投稿、講演会、各種メディアへの寄稿など、電気に関する情報発信を行っています。Watt Magazineでも記事を書いていますよ!」

――大学は上智大学の経済科学部と文系出身の伊藤さんですが、電気業界に興味を持つきっかけはなんだったのでしょう。

「大学を卒業後、商品先物取引をしている金融系の企業に勤めました。そのため、もともと電気とは異なる世界にいたのですが、2012年に始まった固定価格買取制度をきっかけに業界に飛び込むことになりました。この新制度の誕生により、再生可能エネルギーが投資商品になり、再生可能エネルギーを扱うファンドへ入社。そこから電気のお仕事に携わることになったんです」

電気新聞の前で。

――2019年に独立し、2020年にはYouTubeのチャンネルを立ち上げました。YouTubeを始めたきっかけは?

「電力自由化により、異業種から電気業界への新規参入が相次ぎました。それらの企業を新電力会社(新電力)と総称するのですが、私が独立した当時は、地方に特化した新電力がどんどん生まれていったタイミング。

新電力関連のプロジェクトに参画していたこともあり、全国各地に出張していたのですが、2020年の新型コロナウイルスの流行により、東京から出ることが難しくなってしまって…。新電力に参入する企業は業界についてあまり詳しくはないので、そうした企業向けに電気業界の制度を伝えてきましたが、この状況では教えたくても直接お伝えができない。だったら、YouTubeで必要な情報を発信しよう! そう思ったことが始めたきっかけで動画作成を始めたんです。今では業界で働く人へのインタビューから現場取材まで、電気に関するあらゆる情報を発信するようになりました」

1年半で電験三種に合格。試験対策はSNS!?

電気業界紙で特集を組まれたこともある伊藤さん

――試験対策の動画も積極的に発信されていますし、伊藤さん自身、第二種電気工事士と電験三種を取得しています。電験三種は合格が難しいと言われる試験ですが、なぜ資格取得を目指されたのですか?

「今まで電気業界のいろんな話をしているのに、技術的な発信をしていない!と気づき、電験三種の試験を受けようと決めました。資格があるのとないのとでは、信頼性も変わると思ったからです。YouTubeの動画で資格を取ると宣言してしまったので、もう後には引けません。背水の陣で試験勉強に臨みました。1日3時間を目安に勉強し、時間が取れない時でも最低30分は勉強する。試験の1ヶ月前は勉強時間を5〜6時間に増やし、2回目の受験で晴れて合格できました」

――電験三種は電気保安の現場で必要な資格です。現場経験の少ない伊藤さんはどうやって勉強に取り組んだのでしょうか。

「まずは自分に合ったテキストを選びました。あとは基礎が大事なので、基礎を徹底的に学びました。とくに苦労したのは、機械分野です。たとえば、触ったことがないので発電機の仕組みなんてわからない…。そういう時はSNSで『発電機の仕組みがわかる人、教えてください!』と呟きました。するとフォロワーさんがリプライで丁寧に解説を送ってくださったんです!時にはイラスト付きで教えてくれることもあり、合格への道が近づきました。

そのほかのポイントは、1日に10分でも30分でもいいから、必ず勉強する時間を作ること。やはり、継続は力なりです。私の動画をはじめ、今は YouTube動画にも現場や試験に関する動画がいくつもアップされていますので、移動時間やスキマ時間を活用して学ぶのも良いかと思います

文系出身の私は、まず数学や物理の基礎を勉強できる『猫でもわかる数学』というテキストを手に取りました。なんでもそうですが、基礎を積み重ねることは非常に重要です。確実に自分のものにしていきましょう」

――電験三種を取得してから、何か仕事に関する変化はありましたか?


「合格後は、合格したことをお伝えする動画をアップしました。電験三種の試験は難易度が高く、通常は仕事をしながら1年〜3年ほどかけて資格を取得することがほとんど。私は短期集中で1年半で取得しましたが、その後、信頼度が上がり、新たなプロジェクトへの参画や講演会にお招きいただく機会が増えました。今は実務経験を積むために保安の実務に携わっていますが、師匠をはじめ、電気業界の友人も増え、とっても楽しいんです!!」

「イノベーションが起きている」新しい技術や人材を求めている電気業界

電気業界の未来はワクワクが詰まっている!と語る伊藤さん

――電気業界で働く魅力と未来について、伊藤さんの考えを教えてください。

「電気は私たちの生活に欠かせないものです。離島でも山間部でも、どこにいても必要不可欠なものですから、生涯、安定した仕事に就きたい方、インフラを守る仕事をしたい方には魅力的な業界です。しかも、電験三種の資格があれば60歳を過ぎても働くことができます。一方で脱炭素という大きな流れもあり、業界は今、変革期を迎えているんです」

――具体的に、どのような変化を感じていますか。

「もっとも大きな変化は再生可能エネルギーの増加です。以前は昼間の電気料金が高かったのですが、今は太陽光発電の影響で昼間の価格が安くなりました。それに伴い、電気料金のプランも変わってきていますので、電気の使い方も新しい技術を取り入れ、変化に対応していこう、という流れになっています。他にも新しい技術と言えば、福島第一原子力発電所ではロボット技術を活用しています。発電所とロボットの組み合わせって、面白いですよね。電気業界は昔ながらと言いますか、やや保守的なイメージを持っている方が多いように思いますが、現在は新たな技術を積極的に取り入れ、変革しようとしているんです」

――これから新しく変わろうとしているなんて、ワクワクしますね。

「電気業界は今、イノベーションが起こっている最中で、多様な人材を求めています。技術職だけでなく、営業、企画、システム開発など、文系・理系問わず、幅広い職種で活躍できます。地域密着型の仕事から国際的なプロジェクトまで、スケールも種々多々。起業のチャンスもあります。電気の知識があれば海外でも活躍することが可能ですし今、一番可能性に満ちた業界が電気なんです」

伊藤菜々さんラスト写真

取材を終えて

質問に対し、一つひとつ熱意を込めて真摯に回答してくださった伊藤さん。電気業界で働く魅力について「『電気=インフラ』、つまり生活に欠かせないものに携わっているため、安定的に働けること。業界の変革により新しいことにチャレンジできる環境であること」と2つのポイントを教えてくださいました。文系・理系に関係なく、さらには未経験者も転職者も受け入れている電気の世界。自分の可能性を広げたい方にはピッタリと言えるかもしれません。

プロフィール

電気予報士 伊藤菜々 (いとう・なな)
電力系ユーチューバー(電気予報士) 上智大学経済学部経営学科卒業後、金融業界に入社。その後、再生可能エネルギーファンドに転職し、電力全面自由化に伴い新電力の立上げに関わる。2019年から独立し、現在の有限会社スタジオガルを開業。事業内容としては、①会社・サービス紹介youtubeの作成 ②電力事業の立ち上げ支援 ③電力についての研修・困った時の質問窓口 などの支援をする。実績として大手新電力での新入社員・営業部員向けの短期研修や定期研修や国立大学(広島大学)での講義、電力系の展示会やセミナー等での講師を行う。

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