現場インタビュー
電気予報士・伊藤菜々さんレポート!インフラの保守が難しいエリア。東京電力パワーグリッド相模原支社を取材してきたよ!
日本は海外と比較して、災害時の停電復旧がいち早く、電気も高品質です。便利な生活の裏には、電気のインフラの日々の保守保安や、災害時だけでなくトラブルがあった際に、365日24時間体制でインフラを守ってくれている人たちがいます。そのなかでも、樹木が多く、硫黄対策も必要、インフラの保守がとくに難しいエリアと言われているのが箱根・小田原エリアです。今回は、東京電力相模原支社の箱根・小田原エリアの現場を取材してきました!
保守困難エリアとは
電力設備の定期的な保守メンテナンスは、通常、一般送配電事業者や関連会社が行っています。災害時や、日常的にも起こる故障やトラブルがあった際には現場にいち早く駆け付け、停電復旧に向けて尽力してくれているのです。
とくに道が細かったり、山道が険しかったり、現場にたどり着くまでに時間がかかりますし、作業用の大型車両が入れず、復旧に時間と手間がかかる場所もあります。このような場所を保守困難エリアと言います。今回取材に伺った、東京電力PGの相模原支社の中でも、小田原・箱根エリアにおいては、樹木の生い茂る山間部も多く、温泉地ならではの硫黄害もあるとのこと。狭い道路の運転やがけ崩れの危険性、樹木の伐採、虫や熊対策など、多くの危険が伴っているのです。
温泉で有名な箱根ならでは硫黄害の激しいエリア
温泉地で有名な箱根は大涌谷などの観光地も多く、地面から硫黄ガスが噴き出ているエリアでもあります。その影響で、電力設備が錆びやすく、メンテナンスの頻度を多くしなければ、設備の維持が困難だといいます。
一般送配電事業者(今回は東京電力PG)は、インフラ設備を維持するために最低5年に一度は各設備を点検する巡視を行っています。硫黄害の激しいエリアは、設備の劣化が激しくなるため、巡視の頻度を上げてインフラを維持しているそうです。このようなエリアでの設備の維持は非常に大変なことですが、電気を使う人がいる場所には、電気を届けるために、過酷な状況の中でも電力供給を守ってくれているのです。
山間部ならではの保守に行きづらいエリア
樹木が生い茂っている山間部では、通常の雨でも樹木が垂れ下がって電線を引っ張り、停電につながってしまうという事故が多数、起きています。小田原エリアでは、通常の雨でも樹木による配電線事故が多いため、市街地のエリアよりも緊急出動の頻度が高いそうです。
また、緊急出動だけでなく通常の巡視も一筋縄では行きません。車が通れない、登山道のような道に配電線があるため、荷物を担いで、歩いて巡視を行うこともあるそうです。山間部は急に雨が降ることもあるうえ、ハチや熊などの対策も必要です。どこでも電力を使えるということは、どこにでもインフラ設備があるということ。保守保安をしてくれている人達がいるから電気が使えるのですね。
24時間365日体制で電力の安定供給と安全を守ってくれている人達がいる
暑い日も、寒い日も、どんなに天候が荒れていても、昼夜問わず、インフラの復旧をいち早く行ってくれています。また山間部となると、足元も悪かったり、細くて暗い道をかき分けたりして現場に向かうのは、決して楽なことではありませんが、そんな過酷な状況の中でも懸命に電気を守ってくれる人がいるのです。
私たちの便利な生活の裏側には、知られていないけれども、電力の安定供給を守ってくれている人たちがいることを知っていただければ何よりです。
プロフィール
伊藤菜々(いとう・なな)
上智大学経済学部経営学科卒業。電力全面自由化に伴い新電力の立上げに関わった後2019 年から独立し、現在の有限会社スタジオガルを開業。
電力事業の立ち上げ・運営支援、企業PRや商品広報、ZEH住宅やマイクログリッド等の地域脱炭素活動を行う。実績として、電力会社や企業での講演、学校での講義、展示会やイベントの出演を行う。 電気業界をたのしく!わかりやすく!解説した Youtube チャンネル「電気予報士なな子のおでんき予報」を 2020 年 4 月開設し情報発信中。 第二種電気工事士、電験三種取得。現在電験二種の合格に向けて勉強中。