若手技能者が憧れるもう一つの“五輪” ~電気新聞の記者が見た技能五輪世界大会~

更新日:2024.11.22投稿日:2024.11.22

今年9月にフランス・リヨンで「第47回技能五輪国際大会」が開催されました。
今回は、現地入りして精力的に取材、撮影した電気新聞の西村篤司記者、山口翔平カメラマンにその様子を伝えていただきました。

一生に一度の舞台? 若手技能者が腕を競い合う「技能五輪」とは?

若手技能者が腕を競い合う「技能五輪」という競技があるのをご存知だろうか。
日本一を争う全国大会と、世界一を目指す国際大会がある。

種目は本紙が重点的に取材する電気工事系から工場内での作業をイメージした機械系、造園、建築大工、料理、美容まで様々。今年11月22日には、「第62回技能五輪全国大会」が開幕する。愛知県国際展示場(愛知県常滑市)をメイン会場に42職種で競技が行われ、若手技能者が日頃鍛えた技を披露する。

技能五輪全国大会は1963年から毎年開催され、60年以上の歴史を誇る。過去には社会人に混ざって高校生が参戦し、メダリストに輝いたことも。近年では千人以上の選手が出場する規模で開催し、中央職業能力開発協会が中心となって大会を盛り上げている。

全国大会が毎年開催される一方、世界中の技能者が集う国際大会は2年に1度の隔年開催となる。国際大会が行われる前年の全国大会は、日本代表としての選考会を兼ねるため、より一層の熱を帯びる。

その年の全国大会で優勝し年齢制限をクリアした選手が日本代表に選出され、世界の舞台で戦う切符を得られる。国際大会は一部の競技を除き原則22歳以下の若手技能者が対象。選手1人につき1回しか出場できないルールがあるため、「一生に1度の舞台」とされている。

会場にはマクロン大統領も! 2024年9月、仏・リヨンで技能五輪が開催

今年9月、フランス・リヨンで「第47回技能五輪国際大会」が開催され、開会から閉会まで現地を取材した。59職種で競技が行われ、世界約70の国・地域から計1400人の選手が出場した
日本からは55人の選手を派遣。開会式では華やかな演出の中、日本選手団は日の丸を掲げながら堂々と行進した。会場ではマクロン大統領も登場し、大会を盛り上げた。

国際大会の競技は4日間にわたって行われる。日本の全国大会と比べて競技課題のボリュームは格段に多く、技能に加え体力と精神力も必要となる。競技で使われる材料や工具は開催国が用意するため、今回はフランスをはじめ欧州製が中心。日本製と品質や使い勝手が異なることに加え、予定していた材料が届かず急きょ課題の内容が変更される場面も見られた。

同僚や家族も現地で応援! 日本の電気工事会社4社の精鋭が健闘

記者が主に取材したのは、日本の電気工事会社4社から出場した選手たち。

  • 関電工(配管職種・石井悠貴選手)
  • 北陸電気工事(情報ネットワーク施工職種・野ツ俣翔也選手)
  • きんでん(再生可能エネルギー職種・郡安拓海選手)
  • 九電工(電工職種・木原夢叶選手)

選手たちは慣れない環境で心技体を尽くし、世界を相手に激闘を戦い抜いた。会場ではチームの関係者や選手の家族も日本から応援に駆けつけた。

競技終了時には応援団の拍手と歓声に包まれ、各国の選手同士で健闘をたたえ合った。
無事に終え笑顔で手応えを示す選手、作業の途中で制限時間を迎え悔し涙を流す選手など、それぞれの競技で真剣に向き合う選手たちの姿が印象に残っている。

電工職種で海外勢と渡り合った九電工の木原選手(写真提供:電気新聞 撮影者山口翔平記者)

4年後は21年ぶりに日本で開催! メダルラッシュに期待

閉会式で結果発表が行われ、再エネ職種に出場したきんでんの郡安選手が世界一に輝き、金メダルを手にした。
このほか、北陸電工の野ツ俣選手が銅メダルを獲得。関電工の石井選手と九電工の木原選手が敢闘賞に入り、それぞれの職種で好成績を収めた。今大会で日本選手団は、金メダル5個、銀メダル5個、銅メダル4個と計14個のメダルを獲得。全体を通して世界第6位の成績だった。世界トップは中国で、金メダルの数は36個と断トツだった。2位は韓国、3位はフランスと続いた。

きんでんの郡安選手は金メダルを獲得し表彰台で喜びを爆発させた
きんでんの郡安選手は金メダルを獲得し表彰台で喜びを爆発させた(写真提供:電気新聞 撮影者山口翔平記者)

日本政府は厚生労働省が中心となり、国際大会の招致活動を展開。4年後の2028年に行われる第49回大会は、日本・愛知県で開催されることが決まった。21年ぶり4回目の日本開催となり、愛知県での開催は初めて。今年の全国大会と同じ愛知県国際展示場が会場となる。日本勢の〝ホームグラウンド〟でのメダルラッシュに期待がかかる。

プロフィール

西村 篤司記者

異業種を経験した後、2015年に入社。現在は国土交通省を中心に、建設業界や設備工事業界を取材する。独自の視点を持って取材し、深い専門性と分かりやすさを備えた記事を多数発信している。

山口 翔平カメラマン

2009年に入社。通常時の取材に加え、2019年台風19号、2024年能登半島地震など、災害復旧の現場を取材すること多数。その現場を1枚に凝縮する写真は読者の印象に深く刻まれる。

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