すべてが規格外! 都心の電気を支える巨大施設「新豊洲変電所」 潜入レポート!(電験倶楽部共同企画)

更新日:2025.01.09投稿日:2025.01.14

変電所ツアーメイン画像

東京・豊洲にある、世界初の地下式50万V変電所が「新豊洲変電所」です。今回は特別に、都心で使われる電気を供給している非常に貴重な本施設への見学ツアーが実現しました。私たちの生活に欠かせない電気の電圧を変える巨大変電所のなかはどうなっているの?貴重なお写真と共にレポートをお届けします!

東京・豊洲に佇む円筒形の建物。実は世界初の地下式50万V変電所だった

当日の集合場所は、ゆりかもめ・新豊洲駅。集合時間前にはすでに多くの参加者で賑わっていました。
イベントを主催した電験倶楽部の担当者・山口さんに聞くと、「平日の昼の開催にも関わらず募集人数の枠が即座に完売したんです」とのこと。通常、なかなか見ることができない施設とあって、興味関心が高いことが伺えます!

変電所
円筒形の建物の地下に変電所があります。

新豊洲変電所は、新豊洲駅から徒歩5分もかからない場所に位置します。円筒形の建物の地下に変電所があり、上階エリアはオフィスが入っています。ここが世界初の地下式50万V変電所だと言われても、ピンとこないくらい、オシャレな外観のオフィスビルです。ちなみに、円筒形にした理由は建設コストを下げるためなのだとか。

都心で使われる電気量は増加。その対策のため建設された新豊洲変電所

説明を真剣に聞く参加者のみなさん(写真提供:電験倶楽部)

まずは1階にある会議室へ案内いただき、施設を見る前に、新豊洲変電所についての説明を受けました。そもそも変電所とは、発電所から送られてきた電気を供給先に応じて電圧を上げ下げし、電気を届ける施設で、発電所と供給先を繋ぐパイプの役割を担っています。

新豊洲変電所は、都心で使われる電気量の増加にともない建設され、2000年に運用を開始しています。現在では都内だけでなく千葉県や神奈川県にまで送電しており、都心の電気インフラの心臓と言えるでしょう。なお一般家庭で使用されている電圧が100Vに対し、この施設が扱う電圧は50万V。この数字を見ると、どれほど巨大な電力を扱っているかが分かります。

地下3階にあるのは50万V開閉設備

設備がある地下へ。通路はゴミひとつ落ちておらず、静寂な雰囲気です。

変電所は地下1階から4階で構成されており、まずは地下2階へ。コンクリート打ちっぱなしの通路が広がり、高い天井の通路にはゴミ一つ落ちていません。オフィスビルの外観からは想像できない異空間です。変電所は無人で稼働しているため、施設内にいるスタッフはごく僅か。綺麗で静かで人工的。不思議な光景に驚かされました。

50万V開閉設備。スイッチがこんなに大きいなんて驚嘆です!

最初に案内された場所へ入ると、大きな設備がお目見えしました。「すごい、大きい!」と感激の声がちらほら。この50万V開閉設備は送電のオン・オフができる機器です。巨大スイッチをイメージすると分かりやすいかもしれません。50万Vもの巨大電力が漏電などしたら一大事。このような危険な事故を防ぐため、発電所から送られてきた電気はまず、50万開閉設備へ届けられます。

施設の説明を詳細にしてくれるので、新豊洲変電所を深く知ることができます。

新豊洲変電所には、50万V開閉設備だけでなく、主に「27万V」「6万V」「2万V」と計4つの開閉設備があります。つまり事故を防ぐための安全策が取られているのです。いかに安全に送電するかを徹底的に考えて建設された新豊洲変電所。電気と保安はセットなのだと、改めて肌で感じました。

地下4階にあるのは50万V変圧器

50万V変圧器の前で記念撮影をする参加者。プライバシー保護の観点から仮面を付けて撮影しました。

続いて地下4階へ移動。ここには50万V変圧器があります。これも非常に大きい! 複雑で巨大な機器を直で見た参加者は、驚きのあまり目が丸くなっています。

先ほど見た50万V開閉設備から送られた電気はこの変圧器を通ることで、27万Vに変圧。そこから27万V開閉設備を経て、各地域にある変電所へ送られます。

新豊洲変電所と各施設を繋ぐルートが書かれたマップ。

地下3階にある地中線洞道は各施設を繋ぐパイプ

50万Vの電圧を通す地中線洞道。

最後に向かった先は地下3階。巨大な送電線である地中線洞道があるフロアです。発電所から送られてくる電気も、各変電所へ送る電気もここを通ります。

手前の地中線洞道は27万Vの電圧が通り、奥の地中線洞道は50万Vの電圧が通ります。

地下3階にあるのは全て地中線洞道。野太いケーブルで構成された地中線洞道はクネクネとフロアを横断しており、その姿はまるで大蛇のよう。高電圧の電気を通すためには、このような丸太のようなケーブルが必要なのです。

トンネルの何10キロ先には発電所や変電所があります。

地中線洞道が伸びる先へ進むと、室内がどんどん暗くなります。そして行き着いた先にあるのがトンネル。このトンネルは発電所や変電所へ繋がる入り口。地上の下では道路のように地中線洞道が広がっており、ここから都心の各家庭や建物に電気を届けているのです。

世界でも稀な巨大施設の中を覗けて大満足!

たくさんの地中線洞道が通るエリアで記念撮影!

見学ツアーはこれにて終了。
参加した方に感想を聞くと、

「普段はなかなか入ることができない施設の中に入れて嬉しかったです。ここから電気が送られていると思うと、電気を身近に感じることもできました」
「なかなか見られない設備や機器を目にすることができて、貴重な経験を得られました」

と大満足の様子でした。

都心への電気を供給するために作られた新豊洲変電所。みなさんの家の明かりを灯す電気もここを通ってきているのです。安全に送電するには、多くのスタッフや企業の支えがあります。電力の安定供給に関わる仕事は、発電、変電、送電、配電、そして電力系統の運用・保守など、多岐にわたります。今回は変電所施設を見学し、機器を見られたことで、変電所で働くイメージを描くことができました。

電気業界にはさまざまな職種や職場があります。どんな現場や職種があるのか、自分がどんなことに取り組んでみたいかを知るために、今回のような見学ツアーに積極的に参加してみてはいかがでしょうか。

取材協力

電験倶楽部
「電気主任技術者ってカッコいい」のメッセージを掲げ、電気関連資格の取得を⽬指している⽅や既に関連の仕事に従事している⽅のためのWebメディア。情報発信だけでなく定期的にイベント開催。
公式サイト

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