現場インタビュー
未来を担う電気工事士 よしでんエンジニア 「電気の事故で消防士を出動させたくない」
今回紹介するのはカフェにPASを吊った電気工事士。彼の名は、よしでんエンジニア 義平幸也。驚くことに20歳と非常に若い。しかし姿や動きはすでに貫禄がある。作業も丁寧。安全への意識も高い。新しい事にもどんどん挑戦する。実験する。フットワークも軽い。そしてこうも言う。「自分はまだまだ。だからもっと技術を身につける」謙虚な想いをもっている。早熟でありながら向上心がある…加えて新しい感覚を持ち合わせている。20歳なのに、なぜこうまで電気に詳しく、経験豊富なのだろう。彼の進んできた人生はどんな道のりだったんだろう。そしてどこを目指しているのか。感じるのは新しい世代が電気業界に進んできていること。そう、これは次世代の電気工事士インタビュー
目次
電気の英才教育を受けていた幼少時代 ~ ラジコンの改造とモーターの話 ~
電気に進むきっかけ。それはもう幼い子ども時代にあった。覚えているのはコードのついたラジコンの改造をしたこと。その改造とは… 「警報ブザーを作ったことを覚えています。壁にバケツをつけて、その中にそのラジコンを入れました。パトカー型のラジコンだったのでサイレンの音が鳴ってピカピカ光るんです。だからバケツの中に入れたままラジコンを動かすとバケツがピカピカ光って音も鳴って警報ブザーみたいだ!って喜んでいました」 その初めの記憶から驚かされる。もうこれは実験が始まっている。しかも彼のおじいさんは有名な電気会社のモーター事業部。モーターの話をずっと聞かされていた。始めはただ聞いていただけ。でも小学校の頃には理解できるようになっていたらしい。幼稚園に通うある日、「あげるわ」と言っておじいさんから渡されたのはブレッドボード。でもやっぱり興味を持ち自分から「パーツ買いに行きたい」と日本橋に連れて行ってもらい… こんな風に電気に関する英才教育が自然と始まっていた。 両親からよく買ってもらったのは、乗り物が好きなこともあってラジコン。でもことごとく解体されることに… 小3のときにレーザーポインタを両親からプレゼントに買ってもらう。そこに興味を持ったのも 「光が分散しないのはなんでかなと思って。結局分解しましたけど(笑)」 興味を持つ着眼点がすごい。
幼い時の将来の夢は消防士 ~ 電気以外にも広がる消防や科学への好奇心 ~
でも電気だけじゃない。両親にたまたま連れていってもらった消防出初式。そこで見た消防士にあこがれを持った。幼少期の将来の夢は消防士。それにTVに出てくる、でんじろう先生に憧れて科学にも興味を持ち「科学館に行きたい」と言い出す。スライムづくりや紫キャベツでアルカリ性か酸性か性質を調べる実験にもはまっていく。消防に科学… 色んなジャンルに興味を持った幼稚園、小学校時代を過ごした。そして中学校にあがり、飛躍的に実験のレベルが上がったそう。それは… 「電池がもったいないから電源装置を家で作ったんです。レギュレーターを使って電圧可変して。そのうち電熱線を、ニクロム線じゃなく、他の材質でしたらどうなるのか試したんです。例えばアルミやピアノの線とかで。他にも太くなったら熱くなるのか実験していました」 中学生にして家で電源装置を作る… ハッキリ言えるのは、これ、普通じゃない。加えて科学の実験も続けていく。それは電気分解。水と反応して冷たくなる作用を持つ硫酸アンモニウム。その水溶液に電流を通したらどうなるんだろう?そんな疑問が出たら早速実験。やってみたら緑色の物質ができて、水溶液も青くなった。なんで?と気になったらすぐ行動。科学館に電話して聞いていった。分かったのは硫酸銅が生成されたということ。驚くのはすぐ聞く行動力。カタログメーカーに電話して、詳しく製品のことを聞いたこともあるそう。どんどん分からないことを解明していく探求心を持っている。
中2で変わる将来の夢 電気工事士 ~ 工業高校でのクリエイティブな日々 ~
そして中2のとき、消防士になろうという気持ちが変わった。それは家にエアコンを取り付けに来てくれた電工さんに憧れをもったから。その電気工事士は壁を開けるのも試行錯誤しながらやっていた。でも仕上がりはとても綺麗で丁寧。その様子をじっと見ていた。その時、将来の夢が変わった。日常の中の一場面が大きな変化につながった。 だから高校は工業高校へ。入学後、ついに本格的に電気について学ぶ。弱電、強電、送配電について。そして腰道具も買い電気工事にはまった。空いた時間には実習もしていく。家でも学校でも。高2になると電工2種に合格。大阪府電気工事士技能競技大会に出て大阪府で準優勝ももらう。そして高3で電工1種に合格。着々と技術と資格を身につけていく。 「工業高校はめっちゃおもしろいです。本当に電気好きにはおすすめです。最高です。大学級の学びがあると思います。テストも簡単でした(笑)」 高2では部活も作った。工業高校なのに電気に関わる部活がない。でも色んな人に電気のことを知ってもらいたい。だから科学に詳しい友達と一緒に部活を作った。名前はメカトロ工作部。文化祭に作った製品を出した。電気と機械があわさったモノ。5万Vの真空放電や電子工作の体験もできるようにした。そして学校からも表彰を受けた。学校の先生には卒業した今もよく覚えてもらっていて、連絡も取り合っている。やはり特別な生徒だったみたいだ。
電気に関わるいくつかの大切な出会い ~ お金と技術とSNS ~
一方、高校時代に電気工事のバイトも始める。そこでの出会いも大きかった。その社長さんに言われたのは「お金はあとでついてくる。だから先に技術をつけたほうがいい」と。 「お金をもらっても技術なかったら、お客さんは満足しない。まずは技術を売っていく。そういう考えを学びました」 お金のことを高校の頃にもう学んでいた。しかも本質的なことを。この意識を持つのも本当に早い。この現場でもたくさんの思い出と経験があるようだ。 そしてTwitterも始める。ここではいくつか動画をあげている。そもそもこれは何のためなんだろう? 「危険性を知ってほしかったんです。消防技術安全所で働けたらと思ったこともありましたが、もちろん入れないし。だから自分で発信できたらと思って。」 あの動画にはちゃんと意味があった。電気の危険性を知ってもらって、安全に使ってほしい。周りの人に向けたメッセージだった。そして高校を卒業。就職先は電気工事会社。学校の求人先の中で、できるだけ小さな会社に入った。でもここで大きな壁にぶつかる。何か違う。労働時間があいまい。いつからが残業?片付けの時間は?それに仕事はマンションの中の作業だから、同じことばかり。やったことのない作業をしたい。でも今の職場は先輩からもほったらかされ、その中で危ない仕事も多い。 「ここでは自分が伸びない。時間がもったいない」 と思って転職を決め、次の仕事を探し始めた。そのときにカフェジカという東大阪にある電気技術者が集まるフリースペースと出会った。
カフェジカでのイベント ~ 電工イベントで初めての講師経験 ~
「カフェジカって電験のイメージでした。だから電工ってどうかな?行って大丈夫かな?と思っていました。でもはっしーさん(@電気制御 ハンドルネーム)がインスタでイベントをするのを発信しているのを見て、行ってみようと。そのあとカフェジカオーナーの水島さんがイベントしない?みたいな話になって、基本の計測器や電工の実習ならできるかなと。協力してくれるから、やろうと思いました」 イベントをやってみてどうだったんだろう? 「すごい良かったです。人もいっぱいいる! 実習している時も近い! マジか!って。 電工を少しでも広めれたかなとか、色んな分野の人がいて面白かったとか色々あります。「すごかった」と言われて嬉しかったです。そしてこういう環境を作ってくれた水島さんありがたいなと」 そう言ってこれからカフェジカでやりたいことも話してくれた。 「電工の講習をしたいです。高校生に電気工事で分からないことを教えたいです。授業だけじゃイメージ持ちにくいですから。安全な電気の発信もしたいです。こういうことをしたら危ないっていう指標を見せていきたい。一人ではできませんけど、カフェジカでは電気保安と電気工事が一緒になる、全ての電気業種が共有できる場所にしたいです」 もう下の世代に伝えることを考えている。そして自身の転職先に話題は戻る。
新しい道 消防設備士 ~ 魅力的で面白い会社 青木防災 ~
ついにつながった会社は青木防災株式会社。始まりは防災設備機器が欲しくてTwitterであまりものを頂戴出来ないかとDMしたこと。気軽に「いいですよ」と言われ取りに行った。つながりがSNSというのも今の時代らしい。機器を取りに行ったときに挨拶もさせてもらった。そこで感じたのは 「防災屋さんって面白そう」 ということ。確かに青木防災のホームページやSNSは面白い。https://www.aokibosai.com/ 発想が新しいし、ホームページも真面目だけど面白さがある。「そういう会社は余裕がある」そう思ってまたDMを送って面接をお願いしたそう。そして無事合格。今はそこで働いている。やっぱり魅力的な人間は魅力的な企業に集まっていく。本当にいい場所に入ったと周りから見ても思う。 でも、これから一体どんな風に仕事をしていきたいんだろうか。 「お客さんに安全・安心を届けるをメインに。それと自分が満足できる工事をしたいです。工事は1回だけど、お客さんにとっては何十年も使う物。だから丁寧に仕事をしたい。それができないと資格を持っているプロなのに恥ずかしい。知識をつけて、実験もして、安全な施工をして信頼してもらえる工事士・消防設備士になりたい」 そう言って、消防設備の世界にも進んで行く。 「電気は弱電・強電・送配電・制御・保安・防災と色々あります。その中で一つだけで終わるのはもったいないです。色々知りたいです」 好奇心は止まらない。どんどん膨らんでいる。
電気って一体どういうもの? ~ 改めて感じる電気の魅力 ~
そして最後の質問に移る。それは彼にとって電気って一体どういうもの?ということ 「電気は怖いです。だって目に見えないじゃないですか。どこにあるのか、何なのかもわからない。でも今の生活になくてはならないモノ。今の生活を可能にしている電気。だからできるだけ知って安全に使っていく。危なくないようにしていきたいんです。とげとげしたところを丸くしていきたいです」 電気ってなんだろう?分からないからこそ興味がわく。好奇心が溢れる。電気って何だろう…?分からないから怖い。だから安全に使うために知っていく。そのために実験もする。恐怖心が好奇心を沸き立たせ、好奇心による行動が恐怖心を安全安心へと変えていく。どんどん魅力のるつぼへ浸っていることが分かる。 「もう一つ言うと、人が電気を使って物を作る時に、事故を起こしてほしくないんです。安全に丁寧に作られたものは品質にもつながると思うんです。あと… 事故によって消防士を出動させたくないんですよね」 消防士への夢を持った子どもが、大きくなって働くようになった時に「消防士を出動させたくない」と言う。それも素敵な夢の叶え方なんだと感じた。そこには消防士への尊敬を感じさせる、そして世の中の安全を願う一人の技術者がいた。
まだまだ好奇心が赴くままに進んで行く 次世代の電気工事士は 消防設備士となって今も安全のために働いている 色んな現場で活躍してくれることは間違いない 電気の世界に そんな力のある若者が増えてきている そう感じさせる出会いだった
株式会社ミズノワ
電気業界に特化したCAFÉ カフェジカ東大阪を運営
Top電気業界を盛り上げる技術者や求人企業情報 他にも電気業界を明るく照らす話題を「電気通信ピカリ⚡」にて発信している。 https://mizunowa.jp/pikali/